[1]小瀧望、無期限の芸能活動休止します (ページ8)

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やっとの思いで見つけた民宿。

やはり、ホテルではないからそこまで綺麗ではない。

さっきの家と同じくらいの年季。まあ仕方ない。

そう思って入ろうとすると、意外と中に人がたくさんいることに気づいた。

友達で来てる人や、カップルの人、家族の人など、さまざま。

民宿に泊まるということは、もちろん本土から来たということ。

しかも若い人が多い。

バレる可能性があるな…。

近くにいた女性が俺のことをチラッと見た気がする。

それだけでバレたかななんていちいち考えてしまうのは自意識過剰でもあり、職業柄しょうがないところもある。

こんなところまで来たというのに一般の人にバレてしまうのでは、

芸能界から距離を置いた身としては意味がないように感じてしまうしストレスにもつながる。

…大体なんでこんなに観光客が多いんだ。みんな仕事ないのか。

俺はきた道を戻った。

どの人もキャリーバッグを抱えながら民宿にやってきている。

民宿やからみんなで一緒にご飯食べる可能性もあるしな…。

トボトボ歩いて着いた場所は、最初に女性に連れてかれた場所やった。

結局またここに戻ってきてしまった。息を吸ってゆっくりと吐くと

「お。おかえり。」

サヤカさんがやってきた。俺が会釈するとサヤカさんは俺の方を見てニヤッとした。

「民宿はどうしたの？」

「いや、どこも満室で…。」

「ここに泊まりにきたんでしょ？人たくさんいた？」

「はい。相部屋でもいいんで。」

「はいはい。いろんな人に見られちゃうもんね。

あそこは観光客が多いからしょうがない。

ここで匿ってあげる。」

なんとも言い方に悪意がある気がしたけれど、匿ってくれるというのは本当のようなのでありがたい。

「ありがとうございます。助かります。」

俺が礼を述べると、後ろから砂の上を歩く音がした。

振り向くと、同じように麦わら帽子をかぶっているものの、どこか薄汚いような作業服でナスやトマト、コーンの入ったカゴを抱えた女性がそこに立っていた。

それはお世辞にも素敵とは言えず、サヤカさんとは対照的な人だった。