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「…Aさん。」




肩を叩くと、ラベンダー色の麦わら帽子がはらりと落ちた。




サヤカさんとは違って顎紐で止めないタイプ。





「…望くん。」


「楓ちゃんは読書してます。」


「楓は大人しいから、いい子で待ってるはず。」


「はい。」







「…私は、描いた絵を見送ってるんだ。」



「…サヤカさんから聞きました。才能ですね。」








船長らしき人が降りた。そして周りを見て安全確認。



出欠の確認をして、出発の準備を進めている。



Aさんはその様子をじっと見る。



俺も目に焼き付けるかのように眺めた。



サヤカさんの方を見ると、相変わらず組み立て椅子に座って竿の様子を観察してる。





こっちには全然興味ないのか、こっちに目を向ける様子は一ミリも感じられない。



いつも通りの日常なのかもしれない。





「…では、出港。」

「出港」


船員たちの合図で縄を外し、船の中へ。


黒い煙を吐きながら、船は動き始めた。











「…………ちゃんと、届きますように。」












Aさんの方を見ると、



Aさんはパーにした右手を左胸に当てて何度も深呼吸をしていた。







その様子に俺も胸が高鳴る。


この久しぶりの感覚。



それか何を意味しているのかはまだ不確かだけれど分かり始めていた。










「…大丈夫。絶対届くで。」










俺はそう呟いて、Aさんの左手を自分の右手で優しく握った。











驚くAさんにふふっと微笑むと、Aさんは目を伏せて俯きながら少しだけ微笑んだ。

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作者名:きい | 作成日時:2021年8月29日 23時

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