[1]小瀧望、無期限の芸能活動休止します (ページ13)

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楓ちゃんをおろすと、後からやってきたAさんがありがとうございますと申し訳なさそうに言う。

「お子さんいらっしゃったんですね。」

そう言うと、彼女は楓ちゃんの方を向いた。そしてしばらくしてニコッと笑った。

「おてんばで、困ってるけどね。」

そう言いながら彼女は中に入っていった。

楓ちゃんと一緒に俺も入ると、ごま油のいい匂いがした。

「おかえり。

のんすけ、薪の焚き方分かった？」

「あー、なんとなく。」

みんなで円卓に集まって食べる夕飯。

楓ちゃんはバクバク食べていてニコニコ美味しそうな顔をする。

…子供ってなんでこんなに可愛いんやろ。

Aさんはゆっくり食べて消化している様子。

この家にはテレビがないことに気づいた。

…だから俺のことを知る機会がないってことかと納得しながらも、

みんなが素朴に俺と会話してくれるのが嬉しかった。

俺が休止すると決めた時に求めていたのはこういうほのぼのしたような雰囲気やった。

「のんすけは、どうしてここにきたの？」

いつの間にか俺よりも先に食べ終わっていた楓が俺に疑問を投げかけた。

俺がなんて答えようか迷っていると、サヤカさんが助け舟を出してくれた。

「こらこら。そういうことは聞いちゃダメだよ？」

「じゃあ、おしごとはどうしたの？」

「あー。」

「まさか、やめちゃったの？」

「まー、お休み中。」

そう言うと、楓はへぇーと興味なさそうな返事をしてシンクに食器を運んだ。

「偉いな、ちゃんと洗って。」

「あたりまえでしょ、のんすけもあらうんだよ。」

「分かりました。」

俺も楓につられてシンクに持っていき、俺が洗い楓が食器を拭く担当になる。