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「ママー?」
しばらくしていたら、左の方から甲高い声がする。
振り向くと小さい女の子がこっちを向いて立っていた。
…Aさんのお子さん?
小さいと言っても8歳くらいの女の子。
俺は右を振り向いてAさんに声かける。
「お子さん、呼んでますよ。」
彼女は何も言わずにただ火を見つめている。
どこかそこに儚さを感じる。
俺が裾をチョンと引っ張ると、ようやく気づき俺の方を向く。
そしてその先にいる女の子に気づいてようやく立ち上がった。
女の子はAさんの方に近寄って俺の方を見る。
「楓。ただいま。」
「おかえり。このひとは?」
「のんすけって言うんだって。仲良くしてあげて。」
女の子は俺に対して警戒心を強く持っているようで、上から下まで舐めるようにして見てくる。
「のんすけ…。ママのともだち?」
「そう。」
「そっか。わたしはかえで。よろしくね?」
「…楓ちゃん。よろしく。」
俺がしゃがんで楓の頭を優しく撫でる。
「ママに薪の焚き方教わったの?」
「そうやで。ママ教えるの上手いな。」
「私の自慢のママだから。」
「へぇ」
ママの前でそう言えるってすごいな。
そう思いながらAさんの方を見ると、
特に恥ずかしがることもなく俺と楓のやりとりを微笑ましそうに見ていた。
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作者名:きい | 作成日時:2021年8月29日 23時