[1]恋は不明瞭【赤】【緑】 (ページ7)

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私の方が早くバイトあがり、そのまま大学に向かう。

軽音サークルの部室に向かうと、既に大毅の姿が。

「やっぱり。いると思った。」

私は違うけど、大毅はそのサークルの部員。

もうすぐその合宿もあるらしい。３年生の時に既に引退したけど、時々顔をのぞかせているらしい。

ギターをジャカジャカ鳴らしている大毅。

重岡「へへ、なぁ。久しぶりに連弾しようや。」

そう言って、アップライトピアノの前に椅子を二つ用意し始める。

「いいけど、長らく弾いてないから弾けるかわかんないや。なんの曲？」

重岡「何がええ？カノン？」

「パッぺルベル」

重岡「パッヘルベルな。へ、やから。でもそれちゃうくて。」

そう言って差し出したのは、全然知らない楽譜。

「何これ。知らない曲なんだけど。J-POP?」

そう聞きながら、私は音を見つけにいく。

だけど、大毅はそれに対しては何も言わず、左の椅子に座らずにギターをジャカジャカ弾いている。

重岡「最後転調するから。転調する前はロ長調な。転調したら」

「ハ長調。」

重岡「せいかーい」

小さい頃からピアノを習っていたとはいえ、すぐに音が取れるってわけじゃない。

ロ長調は♯が５つある。つまり全ての黒鍵を使うわけで、頭がパンクしそうになる。

シとミ以外は全て半音上がる。

こんな曲をリハなしで連弾で合わせようなんて無茶振り。

大学生になってピアノとギターを始めた大毅。

モテるんやってって、彼女に言う大毅にパンチしながらも許してしまう私も私だ。

ある程度上達したら、有名なクラシックの連弾バージョン曲をどっかのサイトから引っ張り出してきて、

私と一緒に連弾をここでよくやるようになった。

大学に入ってから始めたことなんだけど、大毅はいつも左側で私がいつも右側に座る。

ペダルを踏むのは大毅だから、私側に座り直すこの瞬間にキュンとする。

「…一応できたけど。ほとんど右と左はオクターブ違いだね。」

重岡「そうそう、Aが弾きやすいようにしたー。」

ギターを立てかけてこっちを向き、椅子によっこらせと腰掛ける大毅。

「…これ、大毅が作ったの？」

重岡「ヒヒ、じゃあ弾こうか姫。」

　

　

困り顔で笑いながら、私も楽譜を見つめる。