6 ，ぐさり。 ページ6
『幼なじみなんだから』
たとえば小学校、隣の席の男の子に物を隠されてそれを取り返してきてくれた時。
たとえば中学校、苦手な英語の勉強に追われて泣きそうになってた時。
いつもいつも、ニッコリと笑って潤は私にそう言った。
そんな潤の一言に
ぐさり
と胸を突き刺すような痛みを必死に隠しながら、私も笑う。
「そうだね、幼なじみだもんね」
──幼なじみなんて、嬉しくない。
ピピピピッとけたたましくなるアラームに手を伸ばして、音を止める。
高校生活二日目。
朝からなんとも、嫌な夢を見たものだ。
もうすぐ私の部屋をノックするであろう潤のあの笑顔を思い浮かべながら、もう一度布団に潜り込む。
するとコンコン、と静かになるノック音。
それに返事をしないでいると
ガチャリと開いたドアから
潤のセットした綺麗な髪がちらりと覗く。
「おはよう、A」
この一言で、私の一日は回り出す。
＊ ＊ ＊
じゃあ、俺はこっちだから。と反対の1−Aに歩いていく潤の背中をじっと見つめて、私は自分のクラスである1−Dに歩き出す。
どうして、こんなにもクラスが離れてしまったのだろう。
言っても仕方ないことだとは分かっているが、
それでも不満がちらりちらりと漏れるのは抑えられない。
まして、
ましてや、
(“二宮和也”と同じクラス)
しかも席は前後。
なんという不運。
入学式前にきちんとお参りしたはずなのに、百円玉じゃ足りなかったというのだろうか。
むだに広くて長い廊下をぐったりとした気持ちで歩くと、とんっと肩が前方の人にぶつかった。
「あ、すみませ……」
「あ、ヘンタイちゃん」
その妙なアダ名と聞き覚えのある声に、
ぐりんと重たい頭を持ち上げたら目の前にいたのはあの男だった。
「……にのみや、かずなり」
ポロリと漏れ出た男の名前に
あれ、俺の名前覚えてんのとケラケラ笑った男は、
「席前後だし、よろしくしよーね。
ヘンタイちゃん」
そのやたら綺麗な瞳をニンマリと細めて、
まるで悪魔のような顔で私の手を握った。
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きゅー野郎(プロフ) - すーさん» コメントありがとうございます！潤は潤なりに大切にはしてるのですが……という感じで、性格が悪いとかそんな感じじゃないけど傷付ける人を気を付けて書いてます。ハマると言って頂けてありがたいです！ (2018年3月29日 21時) (
レス) id: e8cf02044d (このIDを非表示/違反報告)
すー - 切ない・・・。でもハマるなあ・・・。潤って結構ひどい男かも。 (2018年3月29日 14時) (レス) id: 4e9063ac6a (このIDを非表示/違反報告)
きゅー野郎(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます！今のところヒーローはただの性格悪いやつみたいな感じになってますが、温かく見守っていただけると幸いです(*'▽'*) (2018年3月22日 15時) (レス) id: e8cf02044d (このIDを非表示/違反報告)
かな - すごく面白いです！ヒロインの幼馴染がほんとに好きなんだなって伝わります‥！頑張ってください！ (2018年3月22日 15時) (レス) id: 3b936ba080 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きゅー野郎 | 作成日時：2018年3月22日 15時
