烏野2年の孤爪さん その5

. ページ17

日向side





『友達なんて、いらないよ』




Aは一瞬、田中さんの言ったことに目を丸くする


ごく普通に、全く悪びれもなく、表情も変えずにケロッとそう言った









この場の空気が固まったのは、言うまでもない









小さい女の子から"友達なんていらない"、なんて単語が出てくるなんて思いもしなかった








『ｹﾎｯｹﾎｯ...研磨とクロ、仁花がいれば私はなんでもいい』

田「お前なぁ...」






『だって、男の子は乱暴で怖い...女の子は何考えてるかわからなくて怖い』







淡々と、なんの感情もこもってない声で、Aは話し出した







『気に入らないとすぐ悪口言いたがる。私は何もしてないのに"ブサイク"って言われる。私がゲームすると、みんなは途中でつまんなくなる』

『なんで、そんな人たちと私は仲良くしなきゃいけないの...？？私は楽しくないのに、みんなに合わせなきゃいけないの...？？』

「「「...」」」









なんか、心が痛くなってくる...









「それが当たり前」といった感じで、一切傷ついてないような9歳のA

表情も、発言も、17歳のAとはかけ離れていた









衝撃的...だが、何も間違ったことを言ってないA


それが、俺たちを凍らせた






あんな小さい子が、あまりにも悲しいことを言うから






谷「な、Aちゃん...」

『ごめん仁花...ｹﾎｯｹﾎｯ...私違う部屋でDSしてる』

谷「Aちゃっ...」








谷地さんが制止しようとするも、リュックとコーチからもらったカセットを持ち、ゲーム部屋を出ていったA









表情も声音も、何も感じさせなかったのに



なんだか、その背中だけは寂しげにに映った









谷「ご、ごめんなさい...！！Aちゃん、悪気はないんですっ」

澤「い、いや確かに驚いたけど、やっちゃんが謝ることじゃないし、もちろんAだって悪くない」



田「すまん、多分俺がAの地雷踏んだんだよな...」

谷「いやいやいや、ちゃんと説明してなかった私にも非があります...それに、一応はアレ...Aちゃんなりの気遣いなんです」








その言葉に、少しびっくりする俺たち








日「谷地さん、それどういうこと...？」

谷「...さっき、Aちゃんが言ってたように、Aちゃんはあれぐらいの時期、いじめなるものを受けてたんです」

「「「...」」」

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す