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やはり詐欺師の出る幕ではない。
心の底から出そうなため息を飲み込み、歩き続けるAの意識は限界に近付いていた。
一瞬の突風に、Aの体はフラリと揺れた。
横に流れた体を立て直そうと、片足を強く踏みしめたその時。
遠く後ろで、懐かしい声が聞こえた。
「A‼‼」
赤井の口から、Aを思わせる言葉が出てきた事で降谷は驚きで言葉が出なかった。
何かを聞き出せる余裕もなくそのまま赤井は目の前から姿を消した。
「あのペンライトは、赤井のではない…?
まさか…
この観覧車の中に…居たのか…っ…」
全ては終わった後だが、降谷は青ざめた。
そして振り返り、異様な様相を呈した観覧車を見上げる。
恐らくこの後、緘口令が敷かれ無数の銃撃を受けたこの観覧車の様子がカメラに収められる事はないだろう。
そして瞬く間に解体され、この事件はなかった事になる。
降谷は、観覧車の姿を目に焼き付けた。
「ん?…これは」
ふと足元に視線を落とした降谷は、地面の赤い何かに気付く。
よく見るとそれは、間隔こそ広いが小さく点々と続いている。
先程、赤井が見つめていた方向に。
降谷は駆け出した。
組織の目がどこかで光っているかもしれない為に、なるべく暗闇を走る。
風が吹き抜け、ザワザワと木々が騒いだ。
降谷はようやく、探し求めていた小さな背中を見つけた。
元より華奢なその背中は、前に見た時よりもずっと小さく見えた。
ビュゥと一際強い風が吹いた。
Aの身体が、フラリと揺れる。
「A‼‼ 」
(間に合わない…っ)
Aは何とか踏み出した片足で体勢を維持した様だった。
降谷は安堵のため息をつき、尚もAの元へ走る。
しかし、降谷の足は突然止まった。
降谷とAの間を遮る様に、黒い車体が滑り込んできたからだ。
(黒い…ポルシェ…っ‼)
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虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» こちらこそいつも読んで下さって本当に感謝です!後に浮かんだ方が主人公らしいかなとは思うんですが、まだ引っ張る?って自問自答してます笑。ラストまでまだまだなのでゆっくり考えます。すれ違った分どうか幸せに…。どうかこれからもよろしくお願いします! (2018年5月18日 0時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - 進行速度が遅いだなんてとんでもない!毎日の更新、本当に感謝ですm(__)mサラッと終わっちゃうんですか(; ゚ ロ゚)!?ハッピーエンド好きな私としては、どうか分かち合って欲しい(>_<)でもどんなエンディングにせよ、虎鉄さんに付いていきますので頑張って下さい!! (2018年5月17日 22時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - いぶさん» ご指摘ありがとうございます!一個年上でしたね(u_u)部下=歳下とばかり思い込んでました。ご指摘下さって本当に感謝です^_^!後でこそっと修正します笑。ただ今いそいそと書き上げておりますので、長い小説ですがこれからも読んで頂ければ嬉しいです^_^★ (2018年5月13日 22時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
いぶ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています。95のシーンで風見より年上のあの人と私は、というところがありますが、降谷さんは風見より年下だったと思います。もし、あの人が降谷さんでなかったり、この中では変更していたらすみません。これからも頑張ってください。 (2018年5月13日 22時) (レス) id: e657a95109 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» ぴよこ様に見限られてなくて良かったです笑!これからもすれ違うのを先に謝っておきます笑。コメントいつも本当にありがとうございます!たまに見返して書く原動力にさせて貰っております。まだまだ完結まで遠いですがこれからもお付き合い頂けると本当に嬉しいです★ (2018年5月9日 15時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年5月9日 2時