【名探偵コナン】消えた捜査官3【降谷零】

114 ページ43

あれから1ヶ月が経過した。

ノックとして疑われたバーボンこと安室透、そして降谷零は自身への監視がようやく解かれた事に安堵した。
暫くは付けることを余儀なくされた盗聴器もめでたく外され、降谷は凝り固まった肩をグルグルと回した。
念の為、盗聴器のチェックは怠らない。

久々に登庁した警察庁では、組織の侵入を許してしまったという物々しい空気と、無事に登庁した降谷に対する安堵の空気が流れている。

「……ふぅ」

あの事件に関する書類を全て片付け、ようやく自由の身になる。
ふと時計を見ると既に日付は変わっていた。
降谷は冷たくなったコーヒーを片手に、今しがた完成させたばかりの報告書をぼんやりと眺める。





降谷にとって身動きの取れなかったこの1ヶ月は、気の遠くなる程に長く感じられた。

降谷は焦っていた。

Aに関してわかっている事は多いようで実は少ない。

自身が爆弾の起爆装置を解除していたまさにあの瞬間、まさかAも観覧車内に居るとは想像もしていなかった。
壮絶なカーチェイスを繰り広げたGT-Rの末路を聞いても、数年前とは違い、降谷はAの生存をすぐに諦めたりする事はなかった。
それは今も同じだ。

しかし、無事とは到底言い難い。
それは、後に発見された観覧車内での出血量から見るに明らかだった。
あの時は既に乾いていた為に本人を前にして降谷が気付く事は出来なかったが。
心配は尽きなかった。

血痕だけではどこに被弾したのか特定は難しいが、少なくとも足でなかったのはあの時の足取りからわかる。
しかしどの道、当分身動きを取ることは難しいだろう。
実際に、ここ最近の米花町での詐欺検挙率は穏やかだ。
それは他の地域にも同じ事が言える。

『ここまで皮肉だと逆に面白い。』

悔しいがその通りだった。
Aの犯罪行為を止めさせたいと思う一方で、Aに何か動きがないと探す事さえままならない。

もし
このまま雲隠れでもされてしまえば
降谷はAを追う術を持たない。






降谷の元に、思わぬ情報が舞い込む。
その知らせは、吉か凶か
降谷を悩ませる事になる。

115→←113 -第4章- Check

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す