【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３６８話 ページ39

勿論組織まで連れていくわけがない。
視界に入った機動隊員に「すみません〜」と声をかける。

「なんかこのキッドキラー君、具合悪いみたいです。さっきまで眠らされてたみたいで」

適当なことを言って、工藤新一を機動隊員に押し付けた。
しかしなかなか腕を離してくれない。どころか「こいつ！ キッドの手下なんだ！」なんて暴れ出す。

「こら！ 坊主！ こんな子供がキッドの手下な訳ないだろう」

私一人の力で振り解けなくても、機動隊員が工藤新一を引き剥がしてくれる。
彼を騙すのは難しくたって、そこら辺の人を騙せばいいだけだ。
じゃーねー、工藤新一。とウィンクして私は走ってお堂を後にする。

「あいつ本当にキッドの手下なんだって！」

そんな声が聞こえたが、逃げてしまえばこっちのもの。
走りながらさりげなく機動隊員から奪ったトランシーバーに耳を傾ける。

『キッド発見！ 山寺から西に2キロのあたりです‼︎』
『こちらもキッドを視認！』

やっぱり快斗も快斗で大変なことになってるようだ。
助けに行こうかーーいや、でも足手まといか？ とりあえず寺井さんのところに向かおうか。
トランシーバーを捨てて、発信機とかが付いてないか今一度確認して、山を降りた。

参道に明かりはあるが、どこか不気味な感じがした。
別にお化けなどを信じているわけじゃないが、なんだか出そうな気がしてできる限り早く足を動かす。ノロノロ歩いて機動隊に見つかるのもめんどくさいし。

って、道どっちだっけ？

気づけば知らないところを歩いていた。
クソ、さっきも迷子になりかけたなと自分に呆れながら、それっぽい方向に足を進める。
が、どんどん山奥に進んでいる気がしてやまない。
来た道を戻るか、頑張って道を探すかーーあるいは漫画みたいに運良く快斗がここを通りかかったりしないだろうかーー

「A！」

声のする方を見ると、機動隊員ーーに化けた快斗がこちらに向かって走って来た。
おお、偶然ラッキーラッキーと手を振ってみる。快斗は珍しく肩で息をしていた。
近くに隊員がいるのでひとまず二人で木の陰に隠れた。

「なーんで警察のヤツら俺のことわかるんだ？ 変装は完璧なハズなのに」
「それは工藤新一が……背中に、これ」

ペリッと快斗の背中にひっついてた予告状を剥がすと、快斗は納得したように息をつき、予告状を丸めて捨てて「んじゃ逃げるか」と立ち上がった。


私も立ち上がろうとしてーー腰をあげるとなぜかぐるりと視界が反転した。

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