【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３６６話 ページ37

「さ、あとは名探偵にちょっかいでも出すか……」

快斗は瞬時に怪盗キッドのコスチュームに早着替えし、お堂の扉にもたれかかった。
工藤新一が何やら違和感に気づいたようでお堂の中に戻ってくる。
その様子を見たキッドは「シーっ」と口の前に人差し指を立て、工藤新一に自身の存在を気づかせた。

「こいつは返しておくぜ……目当ての宝石じゃなかったしな！」
「い、いつの間に！？ げ、元太は？」
「穴の下で寝てるよ……」

怪盗は多くを語らず、探偵も多くを聞き出そうとはしなかった。
キッドは自分の頬に「中森」の字を書き「この怪盗キッドに……不可能はないってことをな‼︎」と機動隊員に早着替えする。

あ、待って、キッドはそのままずらかるんだろうけど私どうすんの？
キッドの方を見てみるが、名探偵に夢中のようで見向きさえしない。
……まあ頑張って逃げるか、なんなら工藤新一のほうについていくか、と思ったが拳銃を含めいろんな話をするんだった。じゃあ私もトンズラすることを考えるかあ。

「んじゃあな！」
「待てよ……忘れ物だぜ！」

キッドが背中を向けた一瞬で工藤新一は彼めがけてサッカーボールをお見舞いした。
ドゴっという痛々しい音が聞こえたと思えばキッドは顔から地面に倒れこんだ。

「あの隊員がキッドだよ‼︎ 捕まえてー‼︎」

キッドは一瞬たじろいだものの、すぐに起き上がり、この場から逃げ去った。
まあ機動隊のカッコしてるから紛れちゃえばバレないんだろうなと思ってるだろうけど、背中には予告状がピッタリついている。
教えてあげようにも、今回はインカムつけてないからな。まあ私もこの混乱に乗じてさっさと逃げようか……。

「おい、待てよ」
「え」
「バーバラ……いや琥珀A。オメー」

工藤新一にがっつり右腕を掴まれてこの場から動けなくなる。
バレてないと思ったんだけどなあ。いやさっきのキッドとの会話を若干聞かれていたのかな。

「怪盗キッドの手下、ってことでいいんだよな？」

ニヤリと笑う江戸川コナン。
跡がつきそうなくらい強く捕まれ、振りほどくこどができない。
あ、これもしかして快斗より私の方がピンチだったりするのかな？

「どうなんだ？ 琥珀A」

ここで素直に頷くほどバカじゃないがどうすればいいのか。
表情を崩さずに頑張って考えて妙案を思いつく。

「工藤新一。貴方は根本的なところから勘違いをしてるね」
「え？」
「私がキッドの手下じゃなくて、キッドが私たちの仲間なんだ」

第３６７話→←第３６５話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す