第361話 ページ32
「いや、彼奴の予告状の追伸に書いてあったんじゃよ! 『今回は幼稚な真似は止め、大人同士で雌雄を決しましょう』とな!」
ああそんなこと書いてたなあ。大人同士って、快斗まだ未成年じゃねーか。私もだけど。
私は歩き回るのをやめ、気絶させられている江戸川コナンのすぐ隣に膝をついた。
「もう気がついてんでしょ。工藤新一」
「……なんでお前がここにいるんだよ」
読み通りというか案の定というか、江戸川コナンーーもとい工藤新一はすでに気がついていた。
工藤新一は他の人に悟られないように、私にだけ聞こえる声で話を続ける。
「まさかこのお堂、組織の息がかかっているとかそういう話じゃないよな?」
「勿論。私イコール組織編、に勝手に繋げないで欲しいなあ」
「じゃあなんで俺たちの前に現れた?」
「うーん、青天の霹靂? かな」
「は?」
「……適当なこと言いました」
日本語はちゃんと使おうと改めて思った。いや常々思っているけど。
特に理由もなく話しかけてしまったので「なんで起きないの? シェリーが困ってるよ?」とそれとない話題を振ることにした。
「キッドが俺を気絶させたのは今回が初めてだからな……」
「なるほど出方を伺っているってワケね」
「……おめー、そういえば絡繰屋敷の時も俺たちの前に現れたよな?」
「あ゛っ!? そ、そうだっけ……?」
自分でも聞いたことのない声が出た。笑って誤魔化したが、誤魔化せてない気がする。
あははと引きつった笑顔を浮かべながら私は工藤新一の傍を離れた。
……ちゃんと麒麟の角は工藤新一のフードの中に入ってるなと確認しつつ、テレビの前にいる子供たちの元に足を運ぶ。
「歩美ちゃん。何かわかった?」
「ううん。わかんなーい」
「っていうかお前、怪盗キッドのファンだろ? なんでオレたちと一緒にナゾトキしてんだよ!」
「いくらコナンくんと灰原さんのお知り合いと言ってもここまでついてくるのはどうかと思いますよ!」
「えええ……あはは」
今日は変に誤魔化してばっかりだな。
私だって好きでこの姿でこのお堂の中にいるわけじゃないんだと心の中で愚痴をこぼす。
いっそあの時の久遠伸一でーす、ってバラしてしまおうか。ああでもこの姿の説明がつかない。
なーんで急に幼児化してしまったんだ、全く。
「にしても……コナンくん、大丈夫かなあ」
「江戸川くんならそろそろ起きるんじゃないのかな」
「マジかよ!」
工藤新一の方を振り向くと、探偵団は一斉に彼の元に駆け寄った。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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