第３５２話 ページ23
「『次の満月の夜7時 麒麟の角を頂きに参上する 怪盗キッド』」
私はテレビに映し出された予告状を読み上げて快斗を視界の端で捉える。
快斗はパソコンをいじりながらーーショーの準備を進めながら時たまテレビに視線をやっていた。
「謎めいた暗号送るのはやめちゃったの？」なんて挑発する風に聞いてみると。「いいや？」と即答される。ちらりと目線が交差する。
「『P.S.今回は幼稚な真似は止め、大人同士で雌雄を決しましょう』が暗号？」
「暗号とまでは言わないが、あえてこう書くことできっと鈴木相談役はあの探偵団くん達を連れてきてくれるはず」
「……暗号じゃなくね？」
突っ込むと、ちょうどテレビで鈴木財閥の会見の中継が始まった。
私も快斗も手を止め、テレビに釘付けになる。
「予告状、出したの今朝だよね？ もう記者会見なんて」
「待ちわびてた、ってことだろ。鈴木相談役は」
快斗が少しだけポーカフェイスを崩した。
まるでお祖父ちゃんに構ってもらいたい、孫みたいだなあ、なんて。
記者会見はつつがなく進行し、質疑応答の時間に入った。
『ーー今回もキッドキラーの江戸川コナンくんに声をかけるんですか？』
『勿論じゃ。そしてーーこわっぱだけではなく、少年探偵団全員に力を貸してもらいたいと考えておる』
聞いて、私はまた視界の端で快斗を捉える。快斗もこちらに視線を送っていた。
「な？」
「わーさすがきっどさま」
抑揚がない声で褒め称えると、快斗はテレビを消し、上着を羽織った。
きっと寺井さんのところだ。私もついて行こうと思い、立ち上がる。
「さ、ショーの準備の仕上げだ」
＊ ＊
鬱蒼とした緑に覆われているお寺に多数の警官、それにテレビ局の中継車が佇んでいた。
空は灰色の分厚い雲が太陽を隠して、時たまゴロゴロと雷を彷彿する音が響いている。
「降ってきそうだな……」
私たちはお堂に全ての仕掛けをし、本堂のブレーカーをいじっていた。
快斗は今日は中森警部に化ける予定だ。私は適当に警察官に化けるつもりでいるーー幼児化はもう解除した。長い長い甘い接吻はすでに木陰で済ませた。これなら半日だって持ってしまう。
「よし、準備オーケーだ」
仕掛け終わったと同時に、大きな雷鳴が轟いた。
もうじき雨が降ってくる。そしてショーの幕開けだ。
「ね、快斗。これ、終わったらちょっと話が」
「奇遇だな、俺もお前に話がある」
私たちは示し合わせたように表情を崩して、それぞれの持ち場に移動した。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ？はどこに行ってしまったのでしょうか？読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (
レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです！更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ？してて面白いです！組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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