第３５３話 ページ24
ざあと音が降ってくる。もとい、強い雨が降ってきた。台風というわりには勢力はもう衰えていて、ただの大雨程度だ。残念なことにハンググライダーを使用は諦める程度の雨風ではあるが。
快斗がプレゼントしたお揃いのパーカーを身に纏った少年探偵団はつい先程到着したばかり。
彼らは台座に流れる電流で痺れたり、今回の仕掛けであるモスキート音を耳にしたり、麒麟の角を間近で拝見したりしている。
「工藤新一、それにシェリー」
以前助けてはもらったが、それの恩返しは別でする。だから今回はちゃんとあなた達とは関わらない。不干渉を貫こうーーいやむしろ逆か。今日はただの好敵手だ。
予告まであと3分か、と荒れた空を仰ぐようにみていると、隣の警官がずいっと近づいてくる。
「おい、何よそ見している」
「すっすみません！」
相変わらずピリピリしてるなあと思いつつ、心の中でカウントダウンを始める。
お堂の中では鈴木相談役が台座の鍵を壁に打ち付け、高らかに勝利宣言をしていた。
そろそろ時間だ、58秒、59秒ーー19時！
私はブレーカーに繋がる仕掛けのスイッチを静かに押す。
ーーお堂の明かりが唐突に消え、雨風が強く舞い込んだ。
ーー中からうろたえるみんなの声と、周囲に鳴り響くモスキート音。
数秒間が空く。
ーーお堂の仕掛けが動き始めた。
ーーうわあと名探偵、コナンくん？ と歩美ちゃんの悲鳴が耳に届く。
全て快斗の、いや怪盗キッドのシナリオ通り。
「ブレーカーを見てきます！」 なんて言って私は持ち場を離れる。
＊ ＊
「随分巧妙な仕掛けですね……」
本堂に駆けつけた警官は私の他に二人いた。
急いでお堂の電気を復旧させるフリをして仕掛けをこっそり回収する。
「後で鑑識に回しておきます」と堂々と嘘をつくのは勿論忘れない。
「今回も、キッドに盗まれちゃったぽいですねえ」
「お前……新人か？ 中森警部の前でそんなこと言うんじゃねえぞ」
「あは。気をつーーあれ？」
「どうした？ 新人」
計画はここで工藤ーー江戸川コナンを気絶させて、病院に連れて行くフリをして脱出する予定なのに扉は閉ざされたまま。加えてお堂の窓周辺の壁は全く壊れていなかった。確かにあの時限爆弾に大量の火薬は入れてなかったが、お堂のボロさ的にもしかしたら壁が吹っ飛ぶかもしれないなんて心のどこかで思っていたのに杞憂のようだった。
「……なんでもありません」
どうやら前々から仕掛けをしていたのは私たちだけじゃないらしい。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ？はどこに行ってしまったのでしょうか？読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (
レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです！更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ？してて面白いです！組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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