第344話 ページ15
安っぽい飴を舐めた時みたいな甘さが口の中にある。少しだけ乾いていた私の舌を湿らすように快斗の舌が絡んだ。もっと密着したい、一つになってしまいたいと思い、気づけば快斗の背中に手を伸ばしていた。ありふれた水音によって思考がどろどろに溶かされる。
「んっ……」
私が気持ちよくなるように快斗は舌を動かしてーーそれは私も同じだった。温い口内の熱を分け合うように、奪い合うようにする行為は気分を高ぶらせた。吐息を漏らすくらいの快感だけじゃもの足りず、もっと溺れたくて、快斗に身を委ねた。
快斗は唇を離して、啄ばむようなキスをは降らせる。不規則なリップ音をわざわざ立てて、もう後戻りはできないぞと言わんばかりに私の目を見た。口の中がより甘くなった気がする。だらりと垂れたどちらのものかもわからない涎を指先で拭って、快斗はまた唇を重ねた。
吸い付くようなキスだった。何かを考えるのが馬鹿らしくなるくらい、気持ちいいと思った。鼻で呼吸をすればいいのに、快斗から酸素をもらいたくなった。当然息苦しくなる。だけどその息苦しさもよかった。ぎゅと回した手で強く快斗にしがみついた。呼応するように快斗も私の背中に手を回す。
「っ……」
刹那体に痛みが走る。ドクンと大きく心臓が跳ねて細胞が作り変えられていくような感覚。名残惜しそうにキスをやめて少し快斗から離れた。意識が飛びそうになるくらいの激痛が去って体から煙のようなものが消え、19歳の姿に戻る。珍しく息がまだ整わない。ちょっとだけしんどくなって床に倒れこんだ。
「大丈夫か?」
私は小さくコクリと頷く。らしくないなと思いながら体を起こす。快斗を直視できない。乱れた呼吸を戻しながら大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせるように、はたまた快斗に聞こえるように呟いた。
「ーーどうする?」
どうする? と言葉を反復して快斗の方を見た。表情はうまく見えないけどなんとなく意地悪めな強かな表情をしている気がした。どうする、の意味が少しわからない。いやわかっているのにわかりたくなかった。快斗は私の唇にそっと人差し指を乗せて、もう一度「どうする?」と訊いてくる。
「……えっと」
うまく思考が回らない。ゴクリと唾を飲み込むと口内の甘さをひときわ感じてしまった。唇をぷにぷにと軽く指で触れたのち、ペロリと舌で舐められ、唇を甘噛みされた。まるで誘導するようで、手懐けるよう。欲しい、と私に思わせるように快斗はもう一度軽くキスを落とす。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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