【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３４１話 ページ12

「なんだよ……そのザマ」

リビングに戻った私を見て快斗は、目を細めて笑って見せた。また私は顔を赧くしてその場に固まってしまう。

「察して……」

距離を取りながら部屋の隅にちょこんと正座する。また心臓が煩くなってきた。なんだこの状況、体だけじゃなくて精神も幼児化したのか私はと自分を貶す。少しだけ快斗の方に視線をやると目があう。合わせてきたのかもしれない。私はビクッと肩を揺らして俯いた。

「ね。A、ちょっと」
「なななななに」
「簡単な爆弾作れるか？」

……仕事のーー怪盗キッドの話か。と落胆する。いや落胆じゃない、安心だ。私は俯いたまま「どんな感じのですか？」と尋ねる。

「時限爆弾」
「時限爆弾！？」

私はパッと顔を上げる。好きとか恥ずかしいとかそんなこと言ってる場合じゃない。時限爆弾で何をするつもりなんだ……まさかお堂を丸ごと吹き飛ばすつもりなのか。

「あーそこまでしっかりしたものじゃなくて、雨戸を吹き飛ばせるくらいの威力でいい」
「雨戸……なら結構小さいものか……多分作れるけど」
「全部の雨戸につけたいからそれなりに数欲しいんだけど」
「爆薬とか材料があるなら……どうにかなるよ」
「材料は寺井ちゃんに頼んで調達してもらおう。あとは……そうだなアレをああして……」

快斗は考えながらペンを走らせる。爆薬なら組織からくすねたほうがアシはつかなそうだ。まあでも寺井さんが用意してくれるならそれでいいか……。

「ちっさいスピーカーみたいなのは？ 作れる？」
「作れる？ っていうか作れよって風にしか聞こえないんだけど……」
「じゃあ四つ。頼む。爆弾よりスピーカー優先で」
「はーい……明日秋葉原にでも行ってくるよ……」

小さい時限爆弾にスピーカー。何をするんだろうか、私は彼の計画が全くわからない。両方小さいものだからやはり子供に関係するのだろうか。それともあのお堂の大きさ的に大きすぎるのはダメなだけか……？ 視線をふと快斗の方にやると「知りたい？」という目で返される。

「ほれ、こんな計画だ」

リビングの隅に座っている私を呼び寄せるために快斗は手招きをする。おいでおいでと言われるとさっきのこともあってますます近づきたくなくなる。が、計画は気になる。逡巡して、決心して、立ち上がって快斗の隣に座る。近くに来るとやはり意識してしまう。快斗の方をなるべく見ないでいよう。

「別にとって食ったりしねーよ……」


耳元でボソッと快斗が呟いた。

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