【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３４２話 ページ13

「わざと耳元で言うのは悪意があるんだろうなと思うけども」
「弱かったっけ、耳」
「確信犯」

私は快斗から少し離れて、メモに目を通す。快斗は別に何も言わずヘラヘラしているーー風に目に映った。ええと計画はどれどれ……と頭を切り替える。

「……モスキート音、なるほどね」
「ああ。どうせ鈴木相談役のことだから名探偵をこの場に呼ぶだろうし。だったらついでにあの探偵団くんたちもご招待しようってわけ」
「彼らはちょうど四人いるし、一人一台……はああ。でも工藤新一ーー江戸川コナンはどうするの？」
「どうするって？」
「仕掛けに気づいて黙って快斗に従う人じゃないと思うけど」
「まあ……それはあいつの出方次第。あ、いや」

快斗の目が光る。私からメモを取り上げて、さらさらと続きを書き始めた。書いた文字を私は読み上げる。

「気絶させるーーって随分強行的な手段だね」
「まああいつはいつも俺のこと眠らせようとするしな……それくらい」
「睡眠薬？ スタンガン？ それとも素手？」
「一番現実的なのはスタンガン……か。気絶させて、病院に連れて行くふりをしてそのままトンズラだ」

快斗はペンを置いて、スマホで何やら操作をする。寺井さんに連絡してスタンガンでも調達しているのだろうか。私はメモをもう一度上から読み返す。

「……あんなに固執してた子供に化けるっていうのは？」
「それはあくまで最終手段だ。まあ今喋ったようにうまくはいかないはずーー警部と名探偵と鈴木相談役がいることだしな。最終手段として子供に化けることを想定している」

快斗はニシシといたずらっぽい笑みを浮かべている。大方、このメモが全てではない。メモはメモであってそれ以上でもそれ以下でもない。最終的な計画書ーー今回のショーの決定稿は快斗の頭の中にしかないのだろう。

「私と寺井さんは特に手伝うことはなさげだね」
「ああ……下準備だけ。まあ万が一のことがあるから、近くには来てもらうけど」
「ふうん。決行は？」
「早くて一週間、くらいか？ 相談役を焦らすわけにもいかないし」
「さっさ予告状ださないと、メディアがお堂のことでもちきりになっちゃうしねー」

夕方のニュースもまたお堂のことを報じていた。本当に鈴木相談役は怪盗キッドのことが大好きみたいだなあと思う。警察はこの状況を見て何か言わないのだろうか。……言わないか。夜のニュースもこうなんだろうな。

「じゃ、あとは手筈通りに……明日からショーの準備だ」

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