第８６話 ページ44
「助けてぇ……助けてくださ〜〜〜い!!」
二枚目俳優『新庄功』からは想像もできない失態ぶりを彼は晒していた。
白いハットを被り、同じく白のマントを風に靡かせながら、噴水のオブジェに摑まり、自分は無実だと訴えている。
巷ではイケメンと評され称される顔も、最早失禁しそうなだらしない顔つきだった。
俺は思わず失笑しそうになった。だがそれどころではない。
タイミングを見計らって、警部たちのいるやや右斜め上空を旋回した。
「キッドォ!?」
耳を劈くような、聞きなれた警部の驚く声。
遠くからだが、ばっちりと目を合わせ、まずこちらに気づかせる。
そして――崎守埠頭に誘導する。
さあ中森警部、ちょいといつも通り『鬼ごっこ』しようぜ。
俺を本物と確信した警部はすぐに部下を引き連れて俺を追跡した。
わざと大きい通りを通って埠頭に向かうように、逃げる。
埠頭に逃げればきっと警部は挟み撃ちで俺を捕まえに来る。
そしたら滑走路が完成するはずだ。
警部、俺の思惑通りに、俺の台本通りに動いてくれ。
≪キッドを挟み撃ちだ!!≫
無線を最大ボリュームにして警部は指示を叫ぶ。
どうやらショーは半ば成功ってトコロらしい。
俺は埠頭にある高いライトの上にスッと着地した。
幾らこの純白の衣装を纏っていようと、すぐに見つかる場所ではないだろう。
「あとは任せたぜ、名探偵……」
＊ ＊
≪乗客の皆さん! これより当機は緊急着陸をします!!≫
≪シートベルトをしっかり締め、乗客員の指示に従ってください!≫
え?
いや。いやいや!?
突っ込みが追いつかないよ。
まず、待ってえっ、我が愛(略)の声が聞こえたことに一言物申したい。
そして、ここに緊急着陸ってことにも物申したい。
もう一度窓の外を見てみたが、そこには室蘭港と埠頭があるだけだ。
まさか本当に埠頭に着陸を――
「お客様、シートベルトを……」
「あ？ ああ、すみませんごめんなさい」
乗務員さんに声をかけられて私は、我に返った。
指示された通り、前に屈んで足の間に頭を入れる。
いやでもこれマジで埠頭に着陸するのか？
初体験というか、こんな体験二度としないぞ。
手をぎゅ、と握るとなぜか汗ばんでいた。
のに、手先はとても冷たかった。
『焦り』か『動揺』か『不安』か。あるいは全部か。
耳を澄ませると、周りの客も皆ざわついていた。無理もないだろう。
落ち着け、と自分に言い聞かせると突然体が重くなった。
ああ、着陸が始まるのか。
うまくやってくれ。
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レモン - 楽しく読ませていただいてます！特に、66の怪盗＆探偵の言い回しが好きです！ (2020年7月30日 19時) (
レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます！イヲハさん、神ですね！(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですｗ。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか？私は大好きです！でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです！ (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです！ (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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