【怪盗キッド】奇術師と道化師 弐

第４６話 ページ4

「お……終わった」

辺りはまだ暗いが、もうそろそろ夜明け。
都会だというのに雀のさえずりが聞こえ、どういうわけだか鶏のなく声も聞こえた。
時計を見ると間も無く五時――結局７時間近くかかってしまったようだ。

スターサファイアに関するすべての情報及び『ジョゼフィーヌ』の出演者や劇場『宇宙』のことまで洗いざらい全てを文字通り丸裸にした。
こういうことは慣れているからな、と思いつつも流石に不眠不休。
情報をまとめるのはあとでにしよう、と考え私はそこでいったん意識を手放した。
――もとい、寝た。


　＊ ＊

ピピ、という電子音で俺は目が覚めた。
学生誰もが嫌がる月曜日だが、珍しく今日は寝起きが良かった。
昨日あんなに考え込んだのにスンナリ起きれたのはどうしてだろう？
この謎は名探偵にも解けないだろうな、なんて心の中で茶化し、ん〜と腕を伸ばした。

リビングではAが寝落ちしていた。
寝てるってことは大方調べ終わったってことだろう。
お疲れさん、の意味を込めてそっとタオルケットをかけた。

普通に可愛い寝顔だった。
あまりにも無防備なので――なんてことも考えてしまったが、そこは理性が働いた。
すると突然。

「……ちゃ……ん」
「え？」

Aが誰かの名前を呼んだ。
聞き取れなかったが○○ちゃん、と呼んだ感じだった。

友達か？ あるいは兄弟姉妹？
Aに友達なんているのか、できなさそうな人格だけどなあ。
兄弟や姉妹も聞いてないしなあ。
親ってことも考えられる――まあ少なくともちゃん付けってことは俺じゃねえんだろうけど。

邪推して少し落胆した。


無意識にテレビをつけると『昨日のこと』を大体的に取り上げられていた。

『怪盗キッド、グリーンドリーム盗まず！』
『犯行失敗か！？』

如何とでも言え、如何とでも書け。
俺は侮辱するようにテレビの画面を睨みつける。

あーあ、今日は一日中青子が上機嫌なんだろうな。
でもあの劇を青子に見せることができてよかったとも心のどこかで感じていた。
そして恵さん――彼女はきっと素晴らしい女優になるだろうな、俺が保証する。

昨日の感激と悔いと、次回の楽しみと焦燥感。
色んな思いが俺の中でぐちゃぐちゃになる。――あーくっそ、楽しいよ。

学校行かなきゃな、と改めて思い制服に着替え荷物を持って青子の家に向かった。


「青子ー！ 今日の朝ごはんなんだー？」

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