【怪盗キッド】奇術師と道化師

第23話 ページ27

『キッドファン大歓迎!!!!』
と書かれたビラが次々印刷されていく。
その数――何枚だかわからない、軽く500枚？

「こんなんでいーか。A、これいろんなSNSに載せて拡散してくれ〜」
「あいあいさー。あとは鈴木財閥からのお知らせにもこれ載せとくね」
「仕事はえーなぁ……」

　＊ ＊

今日は忙しかった。
午前中はビラ作成とキッドファン集め。
お昼を食べてからは、ヘリの整備士に扮して『七番機』の大量生産。

ヘリの数が予想外に多かったので意外と戸惑った。
あと軽く糊付けってのも面倒だった。

『七番機』大量生産のあとは――

　＊ ＊

現在時刻16時35分。現在場所、鈴木大博物館――の裏手。
『潮留公園』の広場から離れた散歩ができる小道。
私はまた19歳の体に戻り、大学生に変装する。
快斗さんもだ。

「そーろそろだぜ」
快斗さんは時計を確認し、辺りに注意を配る。
私も一緒にキョロキョロと周りを見渡す。
標的、見つけた。

「来ました、あっちです」
「じゃ、手筈通りに」

私たちはベンチから立ち上がり、次郎吉さんが歩いてくる方に向かって歩き出す。
丁度、人気が少なくなるところですれ違うようなペースで。
もう少し……あと4,5歩、今だな。

「そのワンちゃんかわいいですねっ〜！」
私は普段出さないような声で、次郎吉さんと愛犬――ルパンだっけ、に近づく。

「撫でてもいいですか？」
「構わんぞ」
次郎吉さんが許可したのとほぼ同時に快斗さんが
「あー！ もしかしてジイさんあの鈴木財閥の次郎吉さんじゃないですか!?」
と騒ぎ出す。
次郎吉さんは『ジイさん』という言葉に眉をひそめたがすぐ「如何にも」と頷いた。
快斗さんは続ける。

「エベレストに最年長で頂上まで登ったりとか、人力飛行機で世界一周とかほんとすげえっす！ 今度は怪盗キッドに勝負を挑むとか、もーまじすげえっすよね」

これだけ煽てれば、気ぃ悪くする人もいねーだろう。

「しかしのう、昨夜の怪盗キッドは中空を闊歩して、うぬらも知っておるじゃろう、どうやって彼奴を」
「そーですよねえ、でも頑張ってください！」

快斗さんはポンと次郎吉さんの肩をたたくふりをして――白いハンカチを口に近づけた。

「――!? き、キッドか」

一度抵抗しようとした次郎吉さんだが、すぐに薬がまわったようだ。
睡眠薬なので、いくらこんな老人でももちろん命にかかわるようなことはないだろう。
ルパン君の方も薬をかがせたのでぐっすり眠っている。

大成功、計画通り。

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