【怪盗キッド】奇術師と道化師

第24話 ページ28

ぐっすりと眠った次郎吉さんとルパン君。
ルパン君は躑躅の茂みに隠し、次郎吉さんは適当なビジネスホテルに連れて行くことにした。

「意外とうまくいくもんだねえ〜」
「まあボディーガードも引き連れねえ爺さんだからなぁ」
さあ……次は？

　＊ ＊

そのあと一度寺井さんの店に戻りまたビラと拡散をする。
そしてもう一度鈴木大博物館前の大通りに戻って人の数を確認する――昨日より全然多いな。

「すごいですね、人」
「昨日の何倍だぁこれ」快斗さんは少し楽しげに見えた。
「2√2倍じゃないですか」
「√使うなよ……ちょい多めに見積もって3倍ってとこだな」

快斗さんは私にあきれつつも、携帯電話を取出した。
「ジイちゃん、俺だよ。昨日の3倍ってとこだな」
『畏まりました』
電話越しに寺井さんがカタカタとパソコンを弄る音がした。


「さあ、準備は全部オッケーだな。あとは……」
「次郎吉さんに変装ですね、頑張ってください」
私はここで今日のショーを見てますよ、と言って人混みに紛れた。

この人の多さだ。
すぐに快斗さんは見えなくなった。

　＊ ＊


間もなく20時、集まったキッドファンがカウントダウンを始めた。
「3、2、1！」

煙幕とともに、怪盗キッドが現れる。
黄色い声が響き、またもやお祭り騒――ん？

突如、私の顔に何か液体が飛んできた。
周りの人たちの唾かと思って一瞬、この周りの人を半殺しにしようとしたけどそうじゃない。
――雨が降ってきたんだ！

私はすぐにインカムを起動させる。
「寺井さん、映像流すのをやめた方がいいです、雨が降ってきました」

寺井さんが乗った7番機の――キッド俯瞰の映像は博物館の特番の映像の切り貼りだ。
傘をさす人なんて映っていないから、気づかれる。

『こちら7番機、特に異常はありませんが、おそらくこの雨の影響で一時的に映像が乱れているのでは……』
ナイス言い訳。

まあこの観衆どもは傘さす気配なんてないけどさ。
それよりも。

「な、今日のキッドなんかおかしくないか？」
「だよな、歩いてるっていうより吊られているって感じだぞ」

気づく人は気づく、ね。
私はまた寺井さんに連絡をとる。

「結構バレてます。おそらく、快斗さんも大海の奇跡を盗んだでしょうし、もう頃合いでしょう」

私の報告後、すぐにキッドの人形が煙を出して姿を消した。
観衆はまた騒ぎ出したので、私はそれに紛れて人通りの少ない路地を通って帰ることにした。
――今、快斗さんがどうなってるかも知らないで。

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