奇病棟脱出ゲーム

》第八話　第二次大量収容 ページ9

そしてそして、またまた次の日。いつものように降りていくと、一実さんと僕さんが掛け布団やら机やらを大量に運んでいた。

「あれ、誰か新しく入るんですか？」

「その通りです。政府が今日から、第二次大量収容というゴミのようなアホキャンペーンを開始したんですよね。あっ、録音はダメですよ？」

ﾋﾟｯ

「あーあ、またバレちゃったか〜。」

　隙あらば録音とは…怖いな。油断ならない。

ｺﾝｺﾝ

「皆さん、おはようございます。早速、患者が入りましたよ。」

　あっ、峯ちゃんの声。ていうか、早速一人捕まっちゃったのか…。

　部屋の向こうの扉が開く。
　現れたのは、帽子をかぶった虹色の目の女の人だった。服が白とか黒色だから、目がさらに目立つ。

　…あれ、なんか既視感が。

「その目…虹夏さんでよろしかったでしょうか？」

　と、既視感の正体、一実さんが言った。

「はい、よろしいです！ なるほど、ここが奇病棟かぁ、沢山人がいるんだね。ちょっとびっくり。」

　たくさん？
　そう思い後ろを見てみると、いつのまにかみんな起きてきていた。花夜さんなんか、もう部屋の奥の定位置についている。

…

　あれ、みんな何かを待ってる？

「あ、そっか自己紹介ね。私は虹夏！色々あって名字はないの。よろしくね！」

　ああ、自己紹介を待ってたのね。

　みんなも自己紹介を返して、家具を運ぶのを手伝う。私たちが今いる部屋の奥に階段があって、それを登ると寝室がずらーっと並ぶ廊下に出る。
　部屋は右と左どちらにもあって、私たちの部屋は手前に固まっている。
　一番手前、右側の部屋の扉には「ｆRose」と彫ってあり、取っ手には「鉈落 凛紅」と書かれた札が掛けてあった。
　左側には「ｍLavendel」と「癸袙 綴」、そのすぐ奥、手前から二番目左側は「ｆAnemone」と「恋咲 花夜」とあり、他の扉も同じような感じだったけれど、名前の札があったのは手前から五番目右側の、「ｎVergissmeinnicht」と「成宮 あい」までだけだった。
　今いる患者さんは六人。
　つまりこの第二次大量収容では、収容予定の患者さんはあと三人ということか。

…それは果たして、「大量」なのか？

　とまぁ素朴な疑問は置いといて、今は家具運びに集中しないと。腕に力を込めて、机を持ち上げる。

「あっ。」

　机が落ちた。

　それも、足に。

「いっ…!!!」

　たぁーい!!!

　残りの声は、足の甲から上がる痛烈な悲鳴に掻き消されてしまった。











　

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