奇病棟脱出ゲーム

　番外編　防護服 ページ23

朝が来た。お腹が空いたので、すぐ下へと降りる。朝食はできているだろうか。
　降りてみると、防護服を着ている人がいた。僕さんかな？

「あぁ、星涙病の奴ですか。近づかないでくださいね。」

　…あれ、僕さんとはまた違う感じの話し方だ。
　顔を覗き込むと、一実さんだった。

「覗かないでください、気色悪いので。」

「え、どうしちゃったんですか…？」

「こっちのセリフです。ほら、さっさと食べて部屋へ帰って下さい。」

　出されたのは、あの五十年前の缶詰だった。

「いやいや、確かに間違えてうららに出しちゃいましたけど、流石に食べられませんよこんなの。」

「は？奇病患者の分際で何を言っているんですか？」

　おかしい。一実さんは職員さんだけど、私たちにはすごく優しくしてくれるはずだ。
　…まぁ、それでも患者さん全員に好かれているわけじゃなさそうだけど。

「一実さん、今日どうしちゃったんですか？」

　…いや、そもそも職員さんに優しさを求めるのが間違っていたのかもしれない。一実さんだって、自分の立場があるはずだ。

「だとしても、なんで急にこんな…」

「意味がわかりません。」

　嘘だ。こんなの、おかしいはずだ。

「あ、深霞さん。おはようございます。」

　もう一人防護服の人がいた。よくみたら、凛紅さんだった。

「え？なんで、何かの奇病だったはずじゃ…」

「誤診だったんだよ。他の人もそうだった。みやちゃんも綴さんも花夜さんも虹夏さんも英くんも成宮さんも壱倉さんもマシロちゃんも佐藤田さんも夕空ちゃんも結衣ちゃんもローズブレイド姉妹も。みーんなみんな、奇病じゃなかったんだ。」

　え、そうだったのか。

「良かった…。」

「でもね、君だけは、誤診じゃなかったんだ。だから、君は一人で、ずーーーーーっとここにいるの」

　え？

　成宮さんが降りて来た。

「そう、だから…あなたは孤独なのよ。清志君とも会えなくて、峯ちゃんの姿も見れなくて。」

　…おかしい。成宮さんは、こんな話し方じゃなかったはずだ。あんまり喋ってるの聞いたことないけど。それに、他にもいろいろおかしい所がある。

　そうか、これは…

「ただの悪夢だ！」

》第二十一話　囁き→←》第二十話　家みたい

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