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微かに耳に入る誰かの声。夜特有の睡魔に気だるさを覚えて薄く目を開いた。

「起きてください、センラさん」

目の前で俺の名前を呼ぶ彼女に驚いた俺は、一瞬で目が覚める。

あまり見慣れない顔に知らない人が家に上がり込んできたかと勘違いしそうになったが、彼女がつけていた淡い桃色のエプロンを見てその思考はすぐに揉み消された。

『……Aさん?』

「すみません、びっくりさせてしまって」

『…いえ、大丈夫です』

跳ねた髪を手櫛で軽く梳かしてゆっくりと立ち上がる。
その様子を見て安心したように、彼女はキッチンに向かった。

『…ご飯、作ってくれてたんや』

彼女はうちの家事の代行をしてくれているAさんだ。
俺は料理も洗濯も部屋の片付けも、一応全部一人で出来る。でも最近は夜ご飯を抜いてしまうぐらいに忙しくて体調を崩しがち。生活バランスもガタガタだ。
そんな俺を見兼ねたうらたさんが知り合いの彼女を呼んだ、というのが経緯。

最初は"自分の家に他人が来て勝手に家事をする"というのがどうしても落ち着かなかったのだが、日を重ねていく事に週に三回彼女が来ることに心地良さを覚えていった。

『…洗濯物も取り込んであるし……』

もはや彼女が部屋にいることが当たり前になってきているのだ。

つけっぱなしだったネクタイを外し襟を整えて、俺もキッチンに足を進める。

『…家、入れたんですね。玄関の鍵閉めたまま寝てたので……大丈夫でした?』

「あ、はい。この間センラさんが合鍵を渡しておいてくれてたので、それで」

『あ、ああ…』

そうだった。ついこの前にAさんに合鍵を……って、俺やっぱり疲れてるんかな。

何となく自分の額に手を当てて、熱が無いのを確認する。まあここで熱があっても困るのだが…結局は熱も何も無かった。

『…手伝いましょうか』

「でも…センラさん疲れているようですし」

そう言って彼女はやんわりとそれを断った。

まあ見た限り一人で出来そうな量ではあるけど…このままじゃダラダラと怠けてしまいそうな自分が嫌なのだ。

『ぜ、全然大丈夫ですから!!』

「…でも……」

『えっと、話したいんです、Aさんと!!ゆっくり話してみたいなーって前から思ってて、』

手を忙しなくがちゃがちゃと動かしてそんなよく分からない恥ずかしい事を言っていると、Aさんは驚いたように俺を見た。
それで、嬉しそうに目を細めて笑った。

例えるなら、花がぱっと咲くような笑顔だ。

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いろみず(プロフ) - ぐわぁぁぁ(尊死) (2021年6月27日 19時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
もものせ(プロフ) - ぷちゃさん» 公開しました!!御報告ありがとうございます! (2021年6月19日 0時) (レス) id: 4421996c2f (このIDを非表示/違反報告)
ぷちゃ(プロフ) - コメント失礼します。しまこちゃんのお話の1話目が抜けている気がするのですが、追加していただけないでしょうか、? (2021年6月18日 23時) (レス) id: 09d034a7a0 (このIDを非表示/違反報告)
乃々夏(プロフ) - 100,000hit おめでとうございます!!!すごすぎますね!!! (2021年3月26日 21時) (レス) id: e426f8e368 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 1の時初コメした者です…! 久しぶりにこの作品を見つけて読んでみるとやっぱり最高でした…!!更新待ってます! (2021年3月21日 23時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もものせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月5日 1時

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