痛む愛【鬼舞辻無惨】

逃亡3 ページ44

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でもそんな私の気持ちなんて、無惨さまに、分かるわけもなく。


無惨さまは、片方の手を私の頬に触れたまま、そっ。ともう片方の手を添えて


私の頬を包んだ




『……！』




まるで、愛おしいとでも言いたげに




細められた瞳は


甘さを含んでいる


怒りの色なんて

そこにはない




どうして



一瞬、無惨さまのその表情の、あまりの綺麗さに、胸が締め付けられ

心がぐらりと大きく揺れた



でも、今しかないんだ


私が私に囁いたようだった



ワタシは迷うことなくその手を振り払い、ﾊﾟｼﾝ！
と乾いた音が響いたときには私は、足を強く踏み込んでいて、一直線に走り


開け放たれた窓に飛び付き、そのままの勢いで飛び越えた！




無「A!!」




私が逃げようとするなんて、そして実際に逃げるなんて予想していなかったのだろう。


反応の遅れた無惨さまが、窓を飛び越えた私の背後から

引き留めるように名前を読んだ。




幸いここは一階だったようで。
そのまま久し振りに畳でも、床でもない土の地面を踏みしめる。

裸足で
ひたすら




無「お前は逃げられない!!!」









その呪いのような言葉を背に

私は、走り出した





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