喰い込む ページ37
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すると無惨さまは気を悪くしたのか、本を閉じると、立ち上がり、部屋を出ていった。
それきり、湯浴みの時間まで姿を見ることはなかった。
それからまた私は無惨さまを見ない日が続いた。
その代わりと言うように、童磨がひょこっと顔を出し始めた。少し久しぶりのような気もする。
童「あれぇ?」
『な、何?』
童磨はパッと何かに気付いたように、少し目を見開いた。
それからすっ。と距離を縮めてくると、私の肩を掴んで、すんすん。と首筋の匂いを嗅ぐように鼻をならした。
童磨の手は大きくごつごつとしていて、私の細い肩は見事にすっぽり収まる
ちょん。と少し当たる鼻先や毛先が当たってくすぐったい。
私は“くすぐったいよ”と少し笑いながら童磨を押し返そうとするけど、全く私が力が入っていないのか、童磨はびくともしなかった。
童「石鹸の匂い、変えた?いつもとは違う匂いがするなぁ〜」
そのままの体制で喋られると、少し熱く湿っぽい吐息がかかって、無意識にビクリ。と体が震える。
早くどけてくれないかな……と思いつつも返事をする
『うん。無惨さまが。土産だと……』
そう口にすると、さも興味無さそうに“ふ〜ん”とだけ相槌を打つと、肩に置いていた手をするりと背に回し、抱き締めるような形をとった。
『童磨……?』
童「何の香り?」
『き、金木犀』
童「あぁ、確かに。良い香り……
それにしても、あの御方がわんこにそこまでするなんてなぁ……」
「君は余程気に入られているのだろうなぁ」と小さく呟くような声が聞こえたあと。
何か鋭いモノが、首筋に__肉に食い込むような、小さな痛みが走る。
『いたっ……童磨……?』
思わず声をあげると、もっと。と言うようにぐっ。とキツく抱き締められ、さらにその痛みが増し、肌に食い込んでいく感覚。
あ、待って。
これ、駄目だ。
童磨の牙だ__
私は途端に危機感を感じ、童磨の胸板を押し返そうとした、その時。
目の前の、童磨の顔が、消えた。
瞬きをする間もなく。誰かに、パシャッと液体をかけられた。
そう思っていたけど、直ぐに鼻が匂いを感じとる。
血だ___
童磨は消えたんじゃない。
切られたんだ、顔を。それで、それでこんなに血が___
でも誰に?
消えた童磨の顔の向こうに、一人の青年の姿。
この人が…………
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はるか - けいどくでしゃくしゃくで。。逃亡者どうまにあったらいいな。。もし、屋敷につれていかれたり。。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ちょこざいですね。中国語では失う鬼の漢字がはいっているんですよ。 (2020年12月8日 12時) (レス) id: d87eae5019 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ろんり的をやぶるのもどうまらしいです。笑った顔を見たことなくて嫉妬したみたいです。後、前回のは魑魅魍魎ちみもうりょうです。そして無惨をドラゴンにたとえて、ドラゴンロード。楽しみです。 (2020年12月4日 21時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - 魑魅魍魎があらわれておもしろくなりました。 (2020年12月2日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ぶりょうをかこつなくてよかったね。頑張って。 (2020年11月23日 19時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:穴 | 作成日時:2020年11月4日 18時