痛む愛【鬼舞辻無惨】

呼ばない ページ29

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童「やぁわんこ」




湯浴みを済ませ、無惨さまが城を出ていったあと＿＿＿自室にいると、後ろから声をかけられる。



いつも決まってこの時間に来るのは一人。(そもそも私に会いに来る人なんてこの人ぐらいしかいない)



童磨だ＿＿＿



童磨はいつも何故か、私のことを“わんこ”と呼ぶ




『わんこじゃない』

童「知ってるとも！」

『Aなのに…もう…』




こうやって何度私の名前を教えても、一向に名前を呼ばない。

毎回名前を忘れてたり……？

流石にそれはどうかしてる。




童「あ！そういえば今日は俺の部屋に来なよ！」




笑顔でそう誘ってくる童磨。

けど私はあまり……というより酷い話だけど、全く童磨を信用していない。


童磨は鬼で、私は人(鬼殺隊)


どうしても、隔てているものを、簡単には取り払えない。




それに、部屋にいけば、何をされるかわからない。

毎日話をしてはいるけど、それは私が気を紛らわすための他ならない。




けど話してるとわかる……思考回路がまず違う。感覚が違うんだ。私達とは。

そこが、一番怖い。

時々、童磨の不気味な一面を、垣間見ることだってある。




『ごめんけど、行かない』

童「えぇ？？どうしてさ？」

『……ここで十分でしょう？』

童「みーんな俺の誘いを断るんだよねぇ…わんこは聞いてくれると思ったのに〜残念だなｧ……」




そう言いながら駄々をこねる子供のように、ごろごろと部屋のなかを寝転がる童

けどピタリと動きを止めると、瞳を輝かせる




童「そうだ！今日はわんこの話を聞かせておくれよ！」

『私の…話？』

童「そう！いつも俺の話ばかりじゃつまらないだろ？」

『……』



童「わんこの事が、知りたいなｧ」



そう言って私の両手を握り、ずぃっと顔を近づけてくる



話……私の話……

何？何がある？

……何もない……




『ご、めん……ちょっと待って…』




思い出そうとしても…思い出せない…?


何かが見え隠れする。

思い出そうとすればするほど、見えなくなる。分からなくなる…




童「…きっと悲しいことがあったんだねぇ……」




言葉と同時に、童磨が顔を歪めながら手を伸ばしてくる。




『え？……』

童「泣く程、辛いことがあったんだね…あぁ可愛そうなわんこ」




気づくと涙が溢れていたようで、涙が頬を伝う感覚がある。


そして、離した童磨の手は、濡れていた。




童「あの御方のわんこじゃなかったら、極楽に導いてあげるのになぁ…」









童磨は一言そう呟いて、そっと私を抱き締めた









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