腐敗 ページ23
.
なんだか、大きな子供を相手にしているようで
きつく結ばれていた唇が……縛られていた体が……ふっ。と緩むようだった
『…終わりました』
声をかけると、ゆっくりと目を開き、頭を持ち上げた。
洗い流しても尚、ゆるゆるとウェーブのかかったままの髪。
どうやったらここまで癖がつくんだろう？
無「何故笑う」
いつのまにか無惨は立ち上がっていて
私は見上げて、無惨が腰かけたままの私を、冷えた瞳で見下ろしている形になっていた
『すみません……』
理由になっていない。と思ったけど咄嗟に口から出たもののため、もう回収はできない
緩んだ心が
ｷﾘｯ。と縛り上げられる。
忘れそうになる。……忘れていた。
この男は鬼で、違う種族で。
人間を食らう天敵で。
ああは言っていたものの、その気になれば、いつでも私を鬼にも出きるし、食い殺すこともできる。
逃げられるのに、逃げられないのは、この男が父さんと重なり、怖いから。
逃げられるのに、逃げられないのは、その先に、出口なんてないからだ。
直感的に、分かっている。
逃げられないのは。
だから、無駄なことを考えるのは、もう止める。
無「さっさと下がれ」
そのピシャリと吐き捨てられた命令に、意識が戻った。
私は言われた通り、そのお風呂場を出た。
まだ湯に浸かっていないけれど、言われたことなんだから仕方がない。
抵抗なんて、するわけもない
脱衣場の棚には、既に新しい着替えが用意されていた。
タオルで濡れた体を拭き終わり、着替えるとべん。と琵琶が二回鳴らされ、もとの自分の部屋へと戻された。
何にもない。
布団が一式しかれている…それだけ。
そばの台には、丁寧にも、私の日輪刀が置かれてある。
私は近寄ってそれを手にする。
『そうだよ……私…鬼殺隊なのに＿＿』
一匹でも多く、鬼を殺さなければならないのに。
物理的に縛られているわけでもないのに。
殺さないと、御館様に、皆に、怒られる…失望される……
いや、そもそもここから生きては出られないんだった
訳もなく、涙がボロボロと流れ始める。
罠に落ちて、たったの一日と数時間。
私は腐敗していった。急速に。
体が、脳が、作り替えられていくように。
今までの私を、壊して、新しく組み立てられていく。
今までの私の従順な部分だけを残して
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 190人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるか - けいどくでしゃくしゃくで。。逃亡者どうまにあったらいいな。。もし、屋敷につれていかれたり。。 (2020年12月16日 20時) (
レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ちょこざいですね。中国語では失う鬼の漢字がはいっているんですよ。 (2020年12月8日 12時) (レス) id: d87eae5019 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ろんり的をやぶるのもどうまらしいです。笑った顔を見たことなくて嫉妬したみたいです。後、前回のは魑魅魍魎ちみもうりょうです。そして無惨をドラゴンにたとえて、ドラゴンロード。楽しみです。 (2020年12月4日 21時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - 魑魅魍魎があらわれておもしろくなりました。 (2020年12月2日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ぶりょうをかこつなくてよかったね。頑張って。 (2020年11月23日 19時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：穴 | 作成日時：2020年11月4日 18時
