湯浴み 壱 ページ19
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私は怖くなって、元の寝ていた部屋に戻ろうとするけど、既にその先の部屋も変わっているのだろうとわかった。
扉が違う。襖じゃない
もうなんとなくこの次に起きる出来事が予想できた。きっともう元の部屋には戻れない。
そうだった…そうだった…ここは鬼の巣食う無限城なんだから…
そういう琵琶の音で部屋を自由に操作できる。なんて血鬼術があっても可笑しくはないんだ
それは襖ではなく、硝子戸のようなものだった。
曇っていてよく見えない。
けど、触れてみると、暖かく湿っていて……そっと目を寄せて、その硝子戸を見ると、その向こうに
外の景色と思わしき暗闇の中に、風呂のようなもの。
つまりここは脱衣場だ!!
湯浴みをしろってことなんだ…きっと
私はパッと服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になると、硝子戸の向こうへと
湯煙の漂う空間に足を踏み入れる
嘘!
もしかして…露天風呂?!
上を見上げると作り物とは思えない満点の空が広がっている!
外はもう真っ暗で、起きたばかりだからまだ、朝なのだとばかり思っていた
私は心が踊った
すごいすごい!!
私は餓鬼みたいにはしゃいで回る。自分が何歳かも、今がどんな状況なのかも忘れて
“こら、そんな走ってるとすっころぶぞ”
ピタ。
今さっき、何処かで父さんの声がした。
そうだ。何で私これが露天風呂だっていうのを知ってたのかと思ったら、一度父さんと来たことがあるからだ…
私は素直に走り回るのをやめ、その場に体育座りをして空を見上げる。
懐かしいなぁ……あの頃は、母さんが生きてて、父さんは優しくて__
何もかんもが輝いていたっけなぁ…
無「何してる。さっさと湯浴みを済ませろ」
一瞬。父さんかと思った。
けど違う。今私が思い出していた父さんは優しかった。私に笑いかけてくれてた…
でもこの声は、記憶の中のものよりずっと低くて、空気を震わせる。
そして、私を従順にさせる
次第に、思い出に霞がかかっていくようだった
『すみません。今済ませます…』
硝子戸に寄り掛かっている無惨を、視界にいれることなく返事をすると、私はすぐ体を洗い始める。
スッ…と心が冷えるようだった
私の位置からはその姿は見えないけど、無惨の気配は消えない。
けど嫌な予感がする__
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はるか - けいどくでしゃくしゃくで。。逃亡者どうまにあったらいいな。。もし、屋敷につれていかれたり。。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ちょこざいですね。中国語では失う鬼の漢字がはいっているんですよ。 (2020年12月8日 12時) (レス) id: d87eae5019 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ろんり的をやぶるのもどうまらしいです。笑った顔を見たことなくて嫉妬したみたいです。後、前回のは魑魅魍魎ちみもうりょうです。そして無惨をドラゴンにたとえて、ドラゴンロード。楽しみです。 (2020年12月4日 21時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - 魑魅魍魎があらわれておもしろくなりました。 (2020年12月2日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ぶりょうをかこつなくてよかったね。頑張って。 (2020年11月23日 19時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:穴 | 作成日時:2020年11月4日 18時