変わる世界６ ページ21
てっきり、今日の本題はそれなのだろうと気を休めかけた私は、ふと、目の前の男が何処かまだよそよそしい態度でいる事に気が付いた。
まるで、恋人に別れの言葉でも告げるかのように言いづらそうにしていて、どう声を掛けたものかと私も悩んでしまう。
それとなく促すべきか、相手の気持ちが整うまでは見て見ぬ振りをするべきか。
神妙な空気を誤魔化すように突くデザートが、思いの外美味しい事にも気が回らない私は、耐えきれず口を開いた。
「デザート、食べないんですか？」
上手いか下手かで言えば、確実に後者だったと思う。
相手の言葉を引き出すためというよりも、聞きたくないとばかりに拒絶するようなニュアンスに聞こえて、私は内心頭を抱えた。
目の前の料理に手をつけない理由を問えば、言い訳代わりに本音を溢してくれるのではないかと浅はかにも考えたのだけれど、対人関係の経験に乏しい私が余計な策を凝らしたところで、まともな対応などできるはずが無い事に、もっと早く気付くべきであった。
その一言に、すっかり私の方が気まずい気持ちになり俯いていると、少しだけ張り詰めていた空気が和らぐ感覚がする。
見上げた視線の先に見えた彼は、観念したとでも言いたげに苦笑いをして、小洒落たデザートを口に運ぶところだった。
甘い香りがする。申し訳程度に運んだ一欠片の、優しい味わいが広がっていく。
何とも驚く事に、私の行動は当たりを引いたらしい。
含んだ甘味を嚥下した後の、すっきりとした表情が私を捉える。
私にとってはここからが本番で、きっと彼にとっても、ここからが本番である。
「今日は、Aに一つ提案があって来たんだ」
「はい」
「提案というか、ただの個人的なお願いなんだが……俺のジムで働いてみる気はないか？」
まずもって私は、首を傾げた。
ジムで働いた経験が無いので分からないが、果たして、ジムリーダーの独断で人は雇えるのかなどと、的外れな疑問が先に頭に浮かぶ。
後から遅れて、掛けられた言葉の意味を飲み込むと、さらなる疑問が私を襲った。
「働くって、その、ジムトレーナーになるって事ですか？」
「いや、違う。お前はそういうの、望んでないだろ？だから、オレが頼みたいのは、ブリーダーとしての仕事だ」
その瞳には、ある種の鋭さが伴っていた。
短くも長かったこの期間の間に、一体彼は何を思ったのだろう。真剣な眼差しが、私の心を真っ直ぐに射抜く。
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藤川秋(プロフ) - ゆゆゆん@VIIさん» あけましておめでとうございます、いつも応援ありがとうございます！今年も更新頑張りますので、よろしくお願い致します。 (2021年1月4日 16時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆん@VII - しゅきぴぴぴ…キバナさんオゴありがとうございます… 主様のペース投稿頑張ってください！ 応援しています！！ ps:明けましておめでとうございます！今年も主様にお供させていただきます！ (2021年1月3日 1時) (レス) id: 9d1fd84ab8 (このIDを非表示/違反報告)
田中@VII - うぽつです！！ やっぱりおもしろいいぃ 続き気になるうぅ 応援してますぅ！ (2020年11月30日 23時) (レス) id: 9d1fd84ab8 (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - 田中@VIIさん» 田中@VIIさん、ご丁寧にコメント下さりありがとうございます！とても励みになります……！更新緩めで申し訳ないですが、これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2020年11月20日 21時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
田中@VII - 好きです。 更新頑張ってください！ (2020年11月20日 16時) (レス) id: 9d1fd84ab8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年10月26日 17時
