静かなる躍動３ ページ11
お互いが向かい合うようにして席に着くと、机の上に用意されていたメニュー表をひとしきり眺めてみた。
内装から何から、一目見ただけで想像がつくくらいには分かりきっていたことだが、そこに書かれた料理の値段が中々に凄まじい。
自分のために何かを買うことはあまりなくとも、ポケモンのためなら惜しみなく金銭を投げ打つ私は、数少ない趣味の割に貯金額はさほど高くない。
なけなしの懐が更に寂しくなることに打ち震えていると、別の意味で背筋が寒くなるような言葉が耳に飛び込んでくる。
「ああ、ちなみに今日は俺の奢りな。こっちの勝手な都合で連れてきちまったんだし、今回は特別だ」
「はい！？いや、駄目ですよこんな高いの！」
「相手の懐事情も聞かずに選んでんだから、当然だろ。遠慮せずに、好きなの選んでくれていいからな」
その爽やかな笑顔の、何とも恐ろしいこと。
確かに彼の言う通り、これだけのものを惜しげなく振る舞ってもらえるということには、言い知れぬ特別感がある。誤解を恐れずに言うならば、如何にもデートらしいサプライズであるとも。
それを嬉々として受け入れられる人は勿論存在するし、下手をすれば己に気があるのではないかと勘違いする人まで出てきそうなものだが、残念ながらその部類に私が入ったことは終ぞ無い。そして、これから先もきっと、その機会が訪れることは無いだろう。
頑として動きそうにない鉄壁の笑顔には、有無を言わせぬ迫力がある。
そんな彼を前に、私は悟る。────これは何を言っても聞かないやつだと。
「……分かりました、ご馳走になります。ありがとうございます、キバナさん」
「どういたしまして。その代わり、次はAが行きたい所を選んでくれよ」
ついでに、さりげなく次回の約束も取り付けようとする狡猾さも持ち合わせているらしい。
こうして上手いこと世渡りしてきたのだろうか、この男は。
相手の領域にも遠慮なく踏み込んでいくような豪胆さでありながら、さしたる不快感も感じさせない手腕は、悔しいかな、中々見事なものである。
そう感じさせる原因の一端には、顔の良さも含まれているのだろう。白状すると、ほんのちょっとだけ羨ましい。
────ある意味、ずるい大人とはこういうものなのだと実感できる典型例で、それはそれで悩ましい部分ではあるのだけれど。
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藤川秋(プロフ) - ゆゆゆん@VIIさん» あけましておめでとうございます、いつも応援ありがとうございます！今年も更新頑張りますので、よろしくお願い致します。 (2021年1月4日 16時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆん@VII - しゅきぴぴぴ…キバナさんオゴありがとうございます… 主様のペース投稿頑張ってください！ 応援しています！！ ps:明けましておめでとうございます！今年も主様にお供させていただきます！ (2021年1月3日 1時) (レス) id: 9d1fd84ab8 (このIDを非表示/違反報告)
田中@VII - うぽつです！！ やっぱりおもしろいいぃ 続き気になるうぅ 応援してますぅ！ (2020年11月30日 23時) (レス) id: 9d1fd84ab8 (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - 田中@VIIさん» 田中@VIIさん、ご丁寧にコメント下さりありがとうございます！とても励みになります……！更新緩めで申し訳ないですが、これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2020年11月20日 21時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
田中@VII - 好きです。 更新頑張ってください！ (2020年11月20日 16時) (レス) id: 9d1fd84ab8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年10月26日 17時
