人魚 ページ14
．
知ってるよ、全部。
．
人魚
．
弱みにつけこんだだけ。
そんなことはとっくに分かってたけど、手放したくなくて。チャンスだと思ってしまった私がいて。
「え…あの子戻ってくるの？」
「らしいよ、田舎のお母さん退院したってさ」
「…そ、うなんだ」
良かったね〜って他人事で話す友達の声はまるで聞こえなかった。
-
「二宮くん」
「…あ」
大学を出て、就職して。
それでもあなたが忘れられなくて。
あなたが、あの子を忘れられないように。
「あの子、実家のほうで就職するらしいね」
「…ああ、そうだっけ」
分かってる。その瞳が寂しげなこと。
でも、ごめんね、二宮くん。
「あのさ、私と付き合ってほしい」
「……え、」
私を、見て欲しかった。ずっと。
．
「ただいま」
「おかえり、かずくん」
待ってたよ、夜ご飯できてるよ。
私をあの子に重ねてくれたって構わない。
それでも、その瞳に私を映してほしい。
私は、醜いけれど。
-
ふと、目が覚めた。
カーテンの隙間から淡い光がこぼれてる。
まだ夜は明けてない。
隣を見たら私の好きなひとが眠ってる。
わたしの好きなひとの、すきなひとは、私じゃない。
「良かったね、かずくん」
あなたの好きなひと、こっちに戻ってくるんだって。
「……ごめんね、」
知ってる。
私が貴方を抱きしめたって少し悲しい顔をすること。
私が貴方に唇を落としたって視線を逸らすこと。
“ 愛して ”なんて言わなかった。
愛してほしくても、あなたは私を愛してはくれないから。
「…苦しめて、ごめんね」
あなたが私を愛せないことを、知ってるから。
つう、って右目から涙が頬を伝った。
起き上がって、静かに一度だけ、唇を落とした。
毛布の中から出て、カーテンからこぼれてる光をもう一度見た。
「___ごめん」
私は、ここから消えてく。
愛されなくて泡になった人魚みたいに、消えてく。
さよなら、って言葉にすれば、また雫が頬を伝った。
「愛してたよ、二宮くん」
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きいろいあめ(プロフ) - 凜さん» 凜さん！お久ですあけおめです！わぁ…嬉しすぎるお言葉ありがとうございます…！今後ともよろしくです！ (2019年1月11日 18時) (
レス) id: f76b3d85cb (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - あけおめでございます！コメントお久しぶりです凜です！最後のニノさんの最後の一言、射抜かれましたね笑笑さすがです。やはりきいろいあめさんの文体がどタイプで、すこすこのすこでございます。今後も楽しいお話待ってます！ (2019年1月9日 23時) (レス) id: ea7207ff5a (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - ほんまですか！！今から見に行きます！！ (2018年10月9日 23時) (レス) id: ea7207ff5a (このIDを非表示/違反報告)
きいろいあめ(プロフ) - 凜さん» 新しいおはなし、今日からなのでよければ見に来てくださいね、！ (2018年10月9日 18時) (レス) id: f76b3d85cb (このIDを非表示/違反報告)
きいろいあめ(プロフ) - 凜さん» 楽しい授業になってたら嬉しいです…笑 (2018年10月9日 18時) (レス) id: f76b3d85cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きいろいあめ | 作成日時：2018年9月4日 18時
