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そう、再生したのだ。
超難問!のアナウンサーの声に、画面にアップに映し出された男性を見て、私は思わずああっ!と声を上げる。
「そうだ!東大王だわ、この人。」
私の脳裏には、先々週の金曜日に駅で見かけた大学生っぽい集団の姿が浮かんでいた。
どこかで見たことあるような、と思っていたが、あの時駅にいたのはこの画面に映っている彼だ。
他にもあの時に一緒にいた人たちが、パッと画面に映る。
(そうか、芸能人だったのね…そりゃ見たことある気がするわけだ。)
勝手に一人で納得しながら、携帯の画面に視線を戻す。
画面の中の彼、伊沢くんが、目にも留まらぬ速さで早押しボタンを押したところだった。
なんだか最近、実はツイてるんじゃない?と一人ちょっとご機嫌になる。
あの時すぐに気がつかなかったけど、実はばったり芸能人に遭遇してて、おまけにかっこいい男の子と相合傘とかしちゃって。
これが、仕事や恋にも回ってくればなお嬉しいんだけど、神様っていうのは、そんなに都合よくはないらしい。
気がつけば私はその番組の、過去放送分まで再生しだしていた。
元が単純なもんで、今まで別にファンだったと言うわけでもないし、別に声をかけてサインをもらったわけでもないのに、私はもう勝手に、見かけただけの伊沢くんの、ちょっとしたファンの気分になりかけていた。
(じゃああの子達は、もしかしたら東大の子達だったのかもしれないのね。たまたま、ご飯でも食べたりしてたのかな。)
私が見たことがある芸能人といえば、学生の頃に見にいった東京ドームでのライブで見た、米粒ほどのサイズの好きなアーティストの姿くらいだったもんだから、突然訪れた芸能人との遭遇に、心が浮き立っていたのかもしれない。
いつしか私は、迫り来る月曜日の憂鬱など忘れてしまっていた。
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作者名:湊 | 作成日時:2019年11月6日 18時