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他の誰かがいるところで開ける訳はないのだが、お寿司のチョコレートフォンデュかもよ。と冗談めかす彼女に眉を顰める。
何がどうしてここまで機嫌がよいのかは定かではないが、まぁそれは俺に対しても心地の良いものだからよかった。
コイツが笑ってんならなんでもいいか。と思考はさながら少女漫画のヒーローで思わずむず痒さに首根っこをさする。
自宅の前でも今一度一人を強調させた彼女と別れ帰路につき、何となく自室のカギをしめてしまう。
手触りの良いクラフト紙を撫でつつ、リボンのかけられた箱を取り出した。
まさか何か飛び出したりでも、いやアイツに限って、と無駄に冷静さをそがれながら指を添わせ箱をあけると、手作りとは俄かに信じがたいチョコレート…というか最早高級店のスイーツの様な風貌に目を丸くする。自然とスマホに手が伸びて、シャッター音が響いた。
「……うっま」
自分の部屋でひとり感想を呟くことほど滅多にないが、気づけば漏れ出る声と二口目が止まらなかった。何となく惜しくて、冷蔵庫の奥に突っ込んで明日まで寝かせる事にする。
それにしても、味も、見た目も、こんなにも体裁が整ったものをよこしておいて何故あれほどまで一人を貫かせたのか分からず首をひねる。
自信がないからとか、恥ずかしいからとか、ほんの少しためらっていた感情もそんな風ではなかったし、勿論寿司とチョコレートのコラボレーションも免れたわけだが。
結局なんだったのだろうか、とふたたび紙袋を覗いて、目を丸くした。
紙袋の底面と同サイズ程度の封筒。手にとり裏へ返すと、淡いくすみピンクのシールで封が閉じられていた。
破かない様にそっと開き、ぴったり真ん中で折られた便箋を取り出す。
白地に薄くゴールドの罫線が引かれた紙には、愛くるしい姿とのギャップが苦しい程、流れる様に丁寧な字がつづられていた。
拝啓 影浦雅人様
この書き出しを一度してみたかっただけなので特に意味はないのですけれど。
きちんとひとりで見てくれてますか?改めて手紙を書くなんて初めてで凄く緊張してしまったので、多分私は一生懸命、ひとりで開けてねって訴えてると思います。
直接会えたり、電話とか、メッセージとか、伝える手段はいろいろあるのですが、雅人さんが喜んでくれたらいいなぁと思って作っていたらすっごく幸せになったので、書いてみることにしました──
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み(プロフ) - かるぴさん» 最後までお読みくださり、またこんなに心温まるコメまでありがとうございます…!!そう仰っていただけてとても嬉しく、執筆してよかったと救われました💕こちらこそありがとうございました💕🐕🎀 (9月20日 15時) (レス) id: c444dbe51c (このIDを非表示/違反報告)
かるぴ(プロフ) - とても面白かったです…!!ついつい最後は泣いちゃうくらい大好きです……!こんな神みたいな作品生み出してくださってありがとうございます😿😿! (9月15日 8時) (レス) @page48 id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - ペネロッペさん» コメントありがとうございます!!こんなにもお褒め頂けてとても光栄です、こちらこそありがとうございます✨ (2023年3月7日 16時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - 完結、おめでとうございます!! とてもとても大好きな小説が完結して嬉しい気持ちとどこか寂しい気持ちがごった返しですが、、、無事、完結という形で終わっていただいた作者様にもう一度、感謝を述べます!ありがとうございました!! (2023年3月6日 15時) (レス) @page48 id: 42dc98278a (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - 亜紫さん» お優しいお言葉ありがとうございます…!!とっても嬉しいです😍他作品も含めお楽しみ頂けます様頑張ります!😊🎁 (2023年2月20日 8時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2022年1月25日 15時