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「…それはどーも。」
「照れ隠し、雑。」
ふにふにと柔い頬を遊びながら、反対の手でマスクを鼻まで上げる。眉根を寄せる俺に伸びる細い手。
「勿体ないよ」
「なにが」
つぅ、と指先が頬を伝って、両手でそれぞれマスクの紐を下から引っ掛ける様に指を入れてくる。
「顔赤い。…かわいい。」
手前にほんの少し引っ張ったと思ったらするりと下げられ、そのまま抜ける指。
いじらしい笑みは体の中心に熱を集めるのが上手くて、緩みかけた頬を隠す様に奥歯を噛み締めた。
「っ〜…ヤメロ」
顔をしかめ立ち上がる俺にけたけたと笑いながら椅子をしまう彼女。居住まいを正し紙袋を持つ手の反対側で見上げてくる。
「…帰んぞ」
「は〜ぁい!」
先に歩き出した俺に駆け寄って並び、ドアを閉めた両手が腕へと伸びてくる。
「…雅人さん、マグロのチョコレートのせってどう思う?」
「………は、…ッ!?」
きゅ、と腕を絡める様に体を寄せたAが進行方向から顔を逸らさないまま呟くせいで、思わず足を止める。
見上げた彼女から純粋に疑問を訴えている感情しか刺さらず面食らうと、にっこりと絵で描いたような笑みを見せた。
「………楽しみだね」
「おい待て。行くな、ちょっと待てコラA」
そのままするりと腕が抜け、自身の靴箱の方へ小走りに駆けていく。生憎学年が違うせいで列は異なり、眉を寄せたまま自分の靴箱へと進んだ。
「そんなに寂しがらなくてもずっと傍にいますよ?」
「ちげぇバカ」
一足早くローファーへ履き替えたAが爪先を小突き足を入れ込みながら、こちらへ振り向いて楽しそうに笑っている。
「違うの?」
私はそばにいて欲しいのに。そんなことをさらりと告げ見上げる瞳。
子犬が訴えている様な表情は俺の顔を羞恥で歪ませるにはいささか完璧すぎた。
「ちがッ…くはねぇ、けど…じゃなくて。話逸らすな」
「んへへ、開けてからのお楽しみ〜」
「ビビるからマジでやめろ」
乱雑にスニーカーを履き込む俺の隣で先ほどからやけにご機嫌な彼女は、ちゃんと一人の時に開けてね。と念を押す。
「…見られちゃマズイもんでも入ってんのかよ」
「入ってる入ってる」
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み(プロフ) - かるぴさん» 最後までお読みくださり、またこんなに心温まるコメまでありがとうございます…!!そう仰っていただけてとても嬉しく、執筆してよかったと救われました💕こちらこそありがとうございました💕🐕🎀 (9月20日 15時) (レス) id: c444dbe51c (このIDを非表示/違反報告)
かるぴ(プロフ) - とても面白かったです…!!ついつい最後は泣いちゃうくらい大好きです……!こんな神みたいな作品生み出してくださってありがとうございます😿😿! (9月15日 8時) (レス) @page48 id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - ペネロッペさん» コメントありがとうございます!!こんなにもお褒め頂けてとても光栄です、こちらこそありがとうございます✨ (2023年3月7日 16時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - 完結、おめでとうございます!! とてもとても大好きな小説が完結して嬉しい気持ちとどこか寂しい気持ちがごった返しですが、、、無事、完結という形で終わっていただいた作者様にもう一度、感謝を述べます!ありがとうございました!! (2023年3月6日 15時) (レス) @page48 id: 42dc98278a (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - 亜紫さん» お優しいお言葉ありがとうございます…!!とっても嬉しいです😍他作品も含めお楽しみ頂けます様頑張ります!😊🎁 (2023年2月20日 8時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2022年1月25日 15時