【WT】影浦雅人に恋した少女は待たずに海路の日和あり 3 【影浦雅人】

誰かさんの好き矢印で中和されるらしい ページ36

ショップ袋を持つ反対の手で指差したものの、雅人さんの瞳は私から逸れなかった。


「こちら、私、トテモ、キニナル」


「オメーが今手に持ってるのは？」


琥珀色の瞳が私の手にする袋を見下ろしたから、隣の棚へ目を逸らし苦し紛れに首の角度が違う事を告げる。


「同じもんだろうがよ」


子どもみたく頬を膨らませてみても、一体いくつ集める気だ、と怪訝そうな顔をされる為もう一つ隣へ指を移動させたのだが。


「じゃあコレ」


「サイズでかくなってんじゃねぇか」



案の定再びお小言をもらうのは、テーマパークのグッズショップ。


普段通りテンションだけで何かを成そうとする私を窘めてくれる雅人さんは、私が駄々をこねたおかげで犬耳がついたカチューシャをつけさせられており何度盗撮しても足りなかった。



あんま可愛すぎん？可愛い空間にかっこいい人が可愛い格好でいるギャップ…と彼の事になると日本語すら上手く出てこない。


案の定、揺れ動きまくる感情に雅人さんは眉を顰める。



「体調は大丈夫ですか？」


「あー…？あんくらいなら大丈夫」



サイドエフェクトによる疲労さをアトラクションで表そうとするのが既に可愛いの大渋滞なのに、展示されているキャラクターの額をつんつん指で押し遊んでいたりするのだ。


一々行動が可愛いの、本当にギルティ。



彼が指さした乗り物の待ち時間が少ない事を確認し、絡んだ腕を引き向かう。

鳴りやむことのないBGMは少々脳内を侵食してくるが、雅人さんの声が今日もかっこいいので大丈夫そう。



「お兄さんお姉さんこんにちは〜！足元に気を付けてお乗りくださいね！」


可愛いお姉さんが案内してくれる可愛い乗り物。

室内ではあるが水上に浮かぶ、手狭な車を模したものに乗ってスリルの欠片もない速度で進み始める。

キャラクターたちが織り成すストーリーを物珍しそうに眺める雅人さんは鼻血が出そうな程に可愛かった。


本来キャラクターにピントを合わせるはずなのに、手前の彼氏様ばかり焦点を当ててしまう。



「あ！私の推し〜！可愛いでしょ〜」


「おー、あれだろ、おはようかこんにちは的なヤツだろ」


「どうしてハローだけ分けて英訳しようとしたんですか」

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