【WT】マンホールに落ちたら指名手配されたんですが誰か無実を証明してくれ (ページ5)

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4話ページ5

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　もしかしたら、これは本当になにかの事件に巻き込まれてしまったということなのかもしれない。

　よくわからないけど、例えばこう、詐欺の会場に連れて行かれて洗脳されてあり得ないくらい高い羽毛布団を買わされるとか、占い師を名乗る人に怪しい匂いの蔓延る部屋で霊障を払う壺を進められたりとか、そんなことが起きたらどうしよう。

　あるいは、金持ちのお遊びでデスゲームに参加させられるとか、そういうのだったら心底怖い。私は人狼ゲームとか弱いのだ。自慢じゃないけど。

　黙っていたらどんどん嫌な想像が膨らんでいって、デスゲームのチャレンジに失敗して狭い棺の中で火で炙られながら死ぬ姿を妄想してしまって「わーーー！！」と思わず悲鳴を上げてぶんぶんと首を振った。

　…….怖い。怖すぎる。頼むもう訴えるなんて言わないからドッキリかなにかであってほしい。それか誰かこの状況を夢だって言ってくれ。

　何度つねっても痛かった頬を再びつねると、やっぱり痛くてため息をつく。

　本当になんだってんだ一体。終いには泣くぞ、いいのか？と謎の脅しをかけながら、牢屋の中に備え付けられていた絶対にお尻が痛くなりそうなくらい固い木でできたベッド(と呼んで良いのかどうかすらも曖昧なもの)に腰掛けた。そのタイミングで、ふと着ていた服のポケットがカサリと音をたてる。

　マンホールに落ちる前に持っていた荷物＿＿スマホや仕事道具などが入った鞄＿＿はどこにもなかったけれど、何かポケットの中に入れてきたものがあったのだろうか？そう思ってポケットの中を探ると、そこから出てきたのはサイダー味のキャンディーだった。

　そういえば、帰りがけに寄ったパン屋さんで配っていた飴をもらってきたな、と思い出す。あぁそうだ、明日の朝食べようと思って買ったあの期間限定桜あんのあんパン。賞味期限が短いというのに、一体どこへ行ってしまったんだろう。楽しみにしてたのに。

　それもこれも全部このわけのわからない状況のせいだ＿＿と再び燃え上がった怒りを鎮めるために、飴を食べることにした。疲れたり混乱してたり、イライラしている時には甘いものと相場が決まってる。そう思って、メタリックブルーの包み紙をほどいた、その時だった。

　それまで何の物音もしなかった牢屋に、ぺた、という誰かが裸足で歩いているような音が響いたのは。