【WT】マンホールに落ちたら指名手配されたんですが誰か無実を証明してくれ (ページ14)

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13話ページ14

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　逃げなきゃ、と思った。

　けれど、一体どうやって逃げたら良いのだろう。それに、どこに逃げたらいい？ここは、多分異世界だ。相手はおそらく、魔法のようなものが使えるし、どの程度強いのかなども一切わからない。私には土地勘も頼るあても、何もかもがない。

　絶望的な状況に思えた。どう考えても、全く良い考えが浮かばない。詰んでる、ってこういうことをいうんじゃないだろうか。もう逆に大人しくここで死ねばいいんだろうか。死んだらもしかしたら元の世界に帰れるかもしれない。ほら、逆転生みたいな感じで。

　はは、という乾いた笑い声は、むなしく消えていくばかりだ。どうしよう、と、割と本気で言って、膝を抱えて座り込む。こんなことしている場合じゃないのはわかっているけど、足がもう動かなかった。多分、恐怖で。

　座り込んだままどうしようと走馬灯をぐるぐるぐるぐる考えていた、時だった。急に耳に怒声が飛び込んできた。次いで、なにかが倒れたり、壊れたりするような音。その音に驚いて、びくりと身体が反応する。物音は、下の階から響いているようだった。

「この＿＿化け物＿＿」「絶対＿＿」などという途切れ途切れの罵声が響き渡る。やがて、何かを殴ったり蹴ったりするような音が聞こえて、下の階は静かになった。というか、家全体が静まり返った。

　＿＿＿＿動くなら、今かもしれない＿＿＿＿

　どういうわけかそう考えた。そうしたら、身体が勝手に動いた。気がついた時には足は動くようになっていて、廊下に出て壁に手を当てながら進んでいた。

　どうやらここはそこそこの大きさの屋敷だったようだ。ようやく階段を見つけた時にはいくつかの部屋を通り過ぎた後だった。耳をそばだてるが、矢張り音は聞こえない。裸足の足で、そうっと階段を降りていくと、やがて1階に辿り着いた。

　まずは出口、と思って辺りを見る。果たして、玄関のようになっている大きな扉がそこにはあったが、勇気を出して近づいてもそこには鍵がかかっていた。そのことにがっかりして、このままここにいたらとんでもなく目立つことに気がつく。

　とにかく、鍵を探さなきゃ、と足を進めていたら、1箇所だけ扉が薄く開いているところがあった。1階の端から3番目の部屋だった。もしかしたら、先ほどの物音はあの部屋から聞こえていたのかもしれない。