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私は幼い頃から魔法を一つ使えた。
私はその鍵がキーブレードという名であることを教えてもらい、そう呼ぶようになった。
魔法なんて、普通なら気味悪がられるかもしれない。
だけど、私が住んでいたのは、私以外に人は二人だけしかいない無人島だったし、彼らも私を受け入れてくれたから特にどうということもなかった。
時が流れて数年。二人のうち一人が死んでしまった。
もう一人は荒れに荒れ、仕事では自分の食料しか取らないようになってしまった。それでも、生きてくれるだけ嬉しかった。
そして私は、死んだ一人の仕事と自分の仕事をこなしながら日々を過ごしていくたび、生傷の絶えない体となっていった。
辛かったが、彼の傷みを取り除けない私は受け入れて、この辛さを乗り越えなければいけないと思っていた。
キーブレードはまだ、使えた。
そうして時が過ぎ、私が十五歳になる前日。
あの人は自分の仕事の最中、足を滑らせてがけから転落した。
思わず手を伸ばしたが、あの人の顔を見たら何も言えなかった。救おうなんて思えなくなった。
あんな安心しきった、嬉しそうな顔。
私では見せることが出来なかったから。
そして私は、彼が闇に落ちていくのをただ眺めていた。
自分の中で何かが欠ける音を聞きながら。
一週間後、私は黒い馬車に導かれてナイトレイブンカレッジ学園の生徒となる。
キーブレードは、使えなくなった。
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作者名:ちょぎ | 作成日時:2020年4月29日 16時