嘘と魔法が勘違い【赤葦京治】 (ページ18)

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今日もまた、昨日と同じように2人で屋上でご飯を食べる。

Aはきらきらとした期待の眼差しで俺がお弁当を開けるのを今か今かと待っている。

ぱか、という音を立ててお弁当箱は開いた。

京「あ...」

思わず声が零れた。

俺のその反応にAはにやにやとお弁当と俺の顔を交互に見ている。

入っていたのは、卵焼きと唐揚げ、ご飯に菜の花のからし和えだった。

...俺の好物

『頑張ったの！まじで！クックパ〇ド先生に聞いたんだよ。いちおー全部味見はしてるから安心して！』

京「...ほんとに、ありがとう。」

”ありがとう”

この言葉以外に的確な言葉が見つからない。

胸の奥から溢れてくるこの温かい感情をなんと呼べばいい？

言葉にできないこの感情を世界中の人に、Aに、なんと説明すればいい？

Aがはやくはやく、と急かしてくるので俺はそっと菜の花のからし和えを口に運んだ。

京「！おいしい。」

『まじで！？よかったぁ！』

嘘でも冗談でも、大袈裟でもなくほんとに美味しい。

イメージとは違う”AA”がどんどん出てくる。

Aは、びっくり箱みたいだ。

毎日毎日、新しい1面を見せてくれる。

本当に予想もしていなかった方向から。

こうやって夏の風に吹かれながら2人でお弁当を食べていると、彼女が死のうとしていることなんて嘘みたいだ。

というか、あれは冗談なんじゃないかとすら思っている。

『京治くん、卵焼きもよく見た？ハートの形なるように切ったんだよ。』

京「あ、ほんとだ。」

『よく見てよ！愛妻弁当感！』

京「そうだね。」

『もっとハートの卵焼きに興味持ってよー。』

京「もってるよ。...ただ、ちょっと恥ずかしいかも。」

ほんとにちょっとだけ恥ずかしい。

ハートの形に切られた卵焼きなんて最後に食べたのは小学生の運動会の日だった気がする。

そのときは作ってくれたのは母親だったが今、これを作ってくれたのは同じ学年の人なのだ。

こうやってハートの形にされると少しは好意を疑うが、相手がAなので疑わない。

だって彼女は多分、俺の事を好きにはならないから。

特に根拠があるわけでもないが、本能的な”なにか”からそう感じる。

『...あ、もうすぐテストじゃん。』

ぽつりと呟いた彼女の言葉はカラスの鳴き声でかき消された。