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.
A「こんにちは……。」
静かにドアを開けると
大きな革張りのソファにスーツ姿の男の人の背中が見えた
慌てて振り返ったその背中は
唇にくわえた煙草を揉み消して
立ち上がって私に向かって驚いたようなまん丸な目を見せた
.
「あの……？」
男は、不思議そうに私を見つめる
.
A「あの……このビラ見て来てみたんですけど……。」
.
もしかしたらこのビラは
この一室の前の借り主のものなのかも知れない
そうだ、きっと
こんな怪しげなビラだけ撒いて
ここを引き払ったのかも知れない
そうよ
こんな、いつのビラなのかさえも分かんないようなもの
アテにした私が間違いだった
.
A「あのっ！間違いましたっ！ごめんなさいっ！失礼しましたっ！！」
.
自分の間違いに気づくと、急に恥ずかしくなって
手にしたビラを握りしめて部屋を出ようとした
とき
.
「まって！」
A「………え？」
「………くださいっ！」
.
慌てて駆け寄ったスーツの男は
私の肩を掴まえて
部屋を出ようとした私を引き止めた
.
「お客さん……ですよね？」
A「……え？」
「そのビラ……。」
A「あのっ！これっ！！！」
ぐちゃぐちゃになったビラに指差して、男は笑う
恥ずかしさに背中に隠しそのビラ
だけど
.
「『あなたの心、癒やします』……と書いたのは僕です。」
A「………え？」
.
この男からは見えないはずのぐちゃぐちゃのビラの中身を
男はさも当たり前に言い当てていた
.
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作者名：四葉（よつば）
作成日時：2014年5月3日 16時
