気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ7)

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２７３話#　台風ページ7

#家#

そんなある金曜日のこと。

あたしは大学の授業が終わるなり家に飛び込んできた。

A「やばいやばいやばい」

慌ててベランダに干してあった洗濯物を取り込んでいく。

A「快晴って言ったじゃーん」

金曜日はシーツを洗濯っていうルールをいつも通り守ったばかりに。

シーツや他のものを竿から外して部屋にぶん投げる。

上を見上げると、夕方の空に灰色の雨雲が広がっていた。

顔に当たる冷たい雨水が、夏の到来を伝えている。

７月に入ろうとしていた。

部屋に散らばった洗濯物は完全に濡れてしまっていた。

A「あーあ、洗い直すしかないや」

１階の脱衣所に降りて洗濯カゴを取りに来ると、玄関に灯りが着いた。

扉が開いて、ヒロトが入ってくる。

ヒロト「ただいま」

A「おかえり。濡れた？」

ヒロト「濡れた」

A「タオル。パス」

ヒロト「ありがとう」

脱衣所にあったタオルをヒロトに投げる。

頭を拭きながらリビングに来たヒロトは、テレビをつける。

すると緊急らしき気象情報が流れる。

ヒロト「はずれたね。天気予報」

A「なるほど。台風が急にカーブしたんだ」

ヒロト「それもスピードがあるらしいね」

窓をぬらす雨は後を耐えることがない。

それもどんどん強くなっていった。

・

夕飯のおかずはホタテと野菜のホイル焼き。

天気は悪くなる一方だし買い物にもいけない。

ヒロト「緑川、帰ってこないね」

A「連絡は？」

ヒロト「ない。まあ、緑川の大学は隣駅だし、電車が止まってもタクシーで帰れるとは思うんだけど」

A「タクシー、混んでるのかも」

ヒロト「...やっぱ、俺が車を持っていればなぁ、迎えにいけたよなぁ」

A「節約中だもんね」

ヒロト「うん。仕方がない」

A「８時になってもまだ帰ってこないようだったら電話してみよ」

ヒロト「そうだね」

しかし、その必要はなかった。