太輔の噂 ページ8
「あの、私のこと知ってますか?」
助手席に座った彼女がそう言った。
「…ごめんなさい。わからないです」
「…ですよね!私目立たないから、」
「そういうわけじゃ…」
「私、添川由美子といいます」
「あ、私は伊藤Aです」
「ふふ、知ってますよ」
「え…?」
「だって伊藤さん、美人で目立っていたから」
「いや、そんな…」
こういうの、どう返したらいいんだろう。
「それに咲ちゃんもすごく可愛くて、ハキハキしてて…。羨ましいな」
褒められすぎて居たたまれなくなった私は「じゃあ向かいますね」と言い車を発進させた。
席に着いてメニュー表を見て値段に驚いた。
コーヒーが一杯860円…
なのに他のママは更にケーキを一緒に頼んでいるから、合わせて私も頼んだ。
けれど添川さんはジュースだけ頼んでいた。
ママ達の話は幼稚園のことだった。
クラブは何に入るか。
鼓笛がやはりみんなやらせたいみたいで、上の子がいるママが詳しくてとても勉強になった。
幼稚園のことは私は全くわからないから相槌を打つばかりだけど。
「鼓笛、キーボードをやれるのはピアノが上手な子だけみたいよ。先生が指名するの」
「先生って太輔先生?」
急に太輔の名前が出て来てドキッとした。
「いいえ。音楽の専任の先生がいて、ピアニカの時間の時に色々吟味するみたいよ」
咲は太鼓を叩きたいと言っていた。
ピアノも習っていない。
キーボードに誰が選ばれるのかという話で盛り上がり始めたから興味のなかった私はケーキを一口食べた。
「そういえば担任の太輔先生、とても素敵ね」
けどその言葉にむせてしまう。
「ええ。うちの子も優しい太輔先生が大好きだと言っているわ」
みんな口々に太輔を称賛している。
園児にもママにも好印象な太輔。
「…でもね、実は上の子の時に噂になったことがあって」
そのママの話に私はとても驚いた。
どうやらそのママの上の子の時も太輔が担任で、同じクラスのママととても親密な関係だったらしい。
胸がざわつく。
本当なんだろうか。
でも今も普通に幼稚園にいるということは、ただの噂なのかもしれない。
「ええ〜っ」
みんな驚いてはいるもののどこか興奮気味だ。
普段刺激の少ない生活をしているからかもしれない。
私も含めて。
「でも、幼稚園の先生にしておくのは勿体無いくらい色気があるわよね」
そのママの一言にみんなが頷いた。
私はその噂が気になってもう上の空になってしまった。
511人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2018年12月9日 19時