検索窓
今日:11 hit、昨日:10 hit、合計:111,140 hit

お願い ページ46

その日の夜も後期くんは一言も話さず寝てしまった。

私は携帯を手にベランダに出た。

少しの間、携帯の画面とにらめっこしてたけど、意を決して太輔にかけてみる。

『はい』

出た!

どうしよう。

何となく出てくれないような気がしてたから、慌ててしまう。

『…もしもし?』

「あ、ごめんなさい。伊藤です。こんばんは」

『…こんばんは』

どこか愛想のない太輔。

何だか話しづらいな。

前みたいに太輔から何か話してくれないからしーんとしてしまう。

「あ、えっと…。キーボード、結構難しいですね」

『そうですね。でも咲ちゃんなら大丈夫だと思います』

「うん…家にピアノがあるから毎日練習するつもりよ」

というか、毎日やらなきゃ弾けるようにならない。

『ピアノ、ご実家から持ってこられたんですか?』

「ううん、もともとあったものよ。たまに咲がお遊びで触ってるくらいだけれど」

『…今はもうピアノ弾かないんですか?』

「結婚してからは全く。ほんとは弾きたいけどアップライトだから響くしサイレント機能もないのよ」

『そうなんですか。でも、たまには弾きたくなりませんか?』

「弾きたいけど…」

電子ピアノなら気兼ねなく弾けるのにな。

あ、そうだ。

「ねぇ、大学生の時に使ってた電子ピアノ、まだ持ってるの?」

『ありますよ。幼稚園で弾く曲を練習したりするから』

「…じゃあ、今度弾きに行ってもいい?」

『え?』

「久々に思いっきり弾いてみたいの。ね、お願い」

付き合っていた頃、よくこうやって無理なお願いをした。

困った顔をしながらも何だかんだ聞いてくれる太輔が好きだった。

「今週末ね、旦那は出張で咲はおじいちゃんおばあちゃんと旅行で一人ぼっちなの。太輔、相手してよ」

『…何言ってるんですか』

引いてる。

太輔、めちゃめちゃ引いてる。

「ちょっとだけ。弾いたらすぐ帰るから」

『駄目です』

「いいじゃない」

『絶っ対、駄目』

なんか、太輔困らせるの楽しくなってきた。

「じゃあ勝手に行っちゃおうかな。太輔のマンション知ってるし」

『来ても入れませんよ』

「入れてよ」

『嫌です』

こんな下らない会話、最近してないな。

…そもそも光輝くんとは最近会話してないけど。

「そんなこと言ってー、来たら入れちゃうでしょ?」

『…すごい自信だね』

「じゃあ、試してみる?私が来たら太輔絶対部屋に入れちゃうと思うな〜」

駆け引き→←鼓笛隊のキーボード



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (192 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
511人がお気に入り
設定タグ:Kis-My-Ft2 , 藤ヶ谷太輔 , 北山宏光   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作成日時:2018年12月9日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。