女じゃない ページ13
「はぁ…」
朝の失態が頭から離れなくて、寝る前までずっとこんな調子でため息が止まらない。
「どうかしたの?」
ベッドですでに夢の世界の咲の隣に横たわり、スマホを弄っている光輝くんがそう聞いてきた。
「実は今日、太輔先生に失礼なこと言っちゃったの」
勘違いしたことは話さずに、スポーツクラブを勧めてくれたけど冷たく断ってしまったことだけを話した。
「なんだよ、そんな事で今日ずっと落ち込んでたの?」
「うん…」
「大丈夫だって、向こうからしたらAなんかたくさんいる保護者のうちの一人だし、いちいち気にしてないから」
渉くんの言葉に私の胸がズキッと傷んだ。
「たくさんいるうちの、一人…」
「そーそー。明日にはすっかり忘れてるよ、絶対。Aと話したことなんかさ」
「…そう、だね」
「太輔先生、若いしイケメンじゃん?A達みたいな保護者はさ、ぶっちゃけもう女にすら見えてないんだよ。だからどう思われたかなんて気にするだけ時間の無駄」
別にそういうことを言ってるんじゃないのに。
ていうか、それは光輝くんもそうなんだよね?
もう私のことなんか女として見ていない。
渉くんの職場にも20代の若い子がたくさんいる。
毎日自分の為だけに時間を使って、身なりに気を使えて、流行りの服を着れる『女』が。
そもそも今日だって太輔はスポーツクラブのことを言ってたのに、私が勝手に勘違いした。
馬鹿みたい。
私はもう、女じゃないのに。
次の日。
太輔は門にいなかった。
違う先生が立っていたから咲をお願いして帰ろうとしたら、弥恵先生に引き止められた。
「クラス委員、ですか?」
「はい。年少さんのクラスからそれぞれ一人ずつ毎年役員さんをお願いしてるんです」
「でも私、幼稚園のことにあまり詳しくないんですが…」
普通、上の子がいるママとかがやるんじゃないの?
「私もそう思ったんですけど、太輔先生から伊藤さんにお願いしたいって言われたので」
「太輔先生が…?」
「担任が選ぶことになってるんです。まあでも伊藤さんが駄目なら他の方に頼むので無理そうならいいですよ」
「いえ、あの、やります!やらせて下さい!」
「…そうですか、じゃあまた詳しいことはお便りと一緒におたより袋に入れさせてもらいますね」
弥恵先生はそう言うとさっさと行ってしまった。
太輔が、私を選んでくれた。
その事実に、あんなに落ちていたのが嘘のように、心が踊った。
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作成日時:2018年12月9日 19時