12時間目 過去 ページ13
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図書室へと続く廊下を進みながら私は思い出していた。
私と白川奏多が初めて顔を合わせた時のことだ。
*
最初に奴を――白川を見たのは1年生の4月、学校が始まったばかりの頃。
顔合わせの意味も含め、学年クラス関係なく1つの教室に集まる全体での学級委員会でのことだった。
そこで私の前の席に座っていたのが奴―――白川だった。
恐ろしいほどに伸びた背筋と、皴ひとつないブレザー。
そして、誰もが話半分に聞いていたであろう、
学級委員担当である教師の話に唯一メモを取っていたのが妙に印象に残っている。
その後、教師の提案で一人ずつ自己紹介をすることになった。
1番最初に呼ばれたのは白川の名前。
教師から呼ばれると、奴は漸くメモを取っていた手を止める。そしてがたりと立ち上がると奴は言った。
「――――白川 奏多です。俺は、自分のクラスをより良いものにしていきたいと思っています」
それから白川はどうやって自分のクラスを奴の言う"より良いもの"にするのか具体案をあげていった。
高校生にもなると、目的をもって学級委員に立候補する者は珍しくなってくる。
私のように成績目的、ないし推薦や前にやっていたからなどの理由が主だ。
だが奴は違ったらしい。奴は自分の信念というものを持ち、目的をもってここにいるのだ。
周りの困惑するような、微妙な目線を物ともせず、奴は話し続けた。
この後も20人程の自己紹介が控えている。教師も一言二言のものを想定していただろう。
先輩に至っては「さっさとしろよ」と小声で愚痴を言うものもいた。
…………まあ、私もそう思わんでもないけど。
でも、なんというか。まあ。
成績目的で学級委員に立候補した私にとって、奴のこの言動は素直にすごいと思った。
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「白川君、だっけ。聞いてたよさっきの。すごいね」
「―――は、」
委員会が終わりさっさと廊下へ出ていく白川に私は声をかけた。
今思えば感情が恐ろしいほど表に出ない奴の
ここまで間の抜けた顔を見たのはこれ以来ないと思う。
眼を見開き驚いたような顔をしていた白川だったが
すぐに元の仏頂面に戻り
「称賛されるようなことは何も、」だのなんだの言ってそそくさと立ち去ってしまった。
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それから、2年生になり同じクラスになるまで私と白川が会話を交わすことはなかった。
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綾木 麗(プロフ) - めっっっちゃ好きです(語彙力) (2022年11月6日 23時) (レス) id: 5a575a9999 (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 夜澄ソラさん» お褒めの言葉頂き嬉しいです……!元々自己満足で自分の好きな物を詰め込んだだけのものなので好き嫌いは別れても致し方ないのかななんて思います、コメントほんとにとっても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 颯貴さん» 初めて長編小説を書かせて頂いたのですがそう言っていただけてとても嬉しいです……!これからもゆるゆる更新させて頂きますのでよろしくお願い致します……! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
颯貴(プロフ) - 夜澄ソラさん» ほんとにそれ。(あっFF外から失礼します)なんでこんな低評価なん?理解できないんだけど (2021年1月5日 23時) (レス) id: b9ddb7cad4 (このIDを非表示/違反報告)
夜澄ソラ(プロフ) - 一気に読んでしまいました。こんなに評価が低いのが理解できないくらい面白かったです……!続きも楽しみにしています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 1c9f7aabed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴのいちご | 作成日時:2021年1月3日 12時