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潰シ屋 ページ19

外は、真っ暗だった。意識が飛んだ時の昼の明るさとのギャップに、時間感覚が歪む。
人通りも少ない。街灯の下に幽霊でも立っていそうな静けさと冷風が、私達を包み込んだ。

『──(ゆう)()。』

人通りのない道でも、誰に見聞きされているか分からない。彼をいつものあだ名で呼ぶのは止めた。

「何だ。」
『私は少し探偵社に寄ってから帰るから、先に行ってて。』

そう言うと、不満そうに眉をしかめる彼。
お願い、と念を押すと、しぶしぶといった様子で歩き去っていった。



“武装探偵社”と書かれたプレートが付けられた扉。
勿論、もう夜明けにも近い深夜だから、明かりは消えているし、人の気配もない。

異能力で扉の向こうに手を咲かせ、鍵を開ける。

私のデスクの2()段目に、小さな紙片が貼られていた。

“毎晩月を眺める彼女を見ているとまるで
  お香の匂いのようにくらくらして
  お堂の仏様に怒られそうな煩悩が湧く”

『初歩的な暗号ね。』

それにしても、何で“場所”教えるのに恋のポエム…じゃなくて、暗号書いたのかしら。しかもちょっと大人な。敦君が見たら首傾げそう。

『さて…』

携帯を取り出す。1番上にある見慣れた連絡先に電話をかけた。ワンコールでかかった。早い。

『もしもし、トラ男くん?』
“どうした、何かあったか?”
『そういう訳じゃ、』
“今すぐ向かう。場所を教えろ。”

まあ別れてすぐ電話かけられたらそうなるわね…と私は遠い目をした。

『何もないけど。晩香堂(ばんこうどう)の場所を調べてほしいの。』
「晩香堂?ああ、あそこか。」
『え?』

思ったよりすぐに合点がいったような返事があって、驚く。

「“前に少しだけ所属してた組織が、”」

後ろと携帯から二重に声がした。振り返ると本人がいたので、電話を切る。

『せっかちね。』
「…続けるぞ。その組織が、今ここの社長の…福沢諭吉に潰された。そして、俺はたまたまその晩香堂、その時の福沢の拠点の情報を手に入れたって訳だ。」
『ちなみにその前いた組織って、』
「さあ…名前も覚えてねぇ。とにかく弱くて、しょうもない組織だった。福沢に組織の情報を横流ししたのは俺だ。」
『出た、いつものパターン……』

トラ男君は色々な裏組織から情報を盗み、潰して回っている。有名な潰し屋、兼、情報屋だ。

『いつか背後から刺されないと良いわね。』
「それ言うならお前もな。」
『……』

……嫌なひと。

金ト翠、中身ハ→←微妙ナ関係性



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作者名:ミカン酢 | 作成日時:2022年10月22日 16時

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