彼ナリノ心配方法 ページ17
──貴方は本当に、無茶ばっかりするわね。
違う、無茶なんかじゃない。
私はただ、大切な人を守りたいだけ。
だから、そんな目で私を見ないで。
やめて───、私は……！
『───おかあさん、』
何かを必死に言おうとして、目が開いた。私らしくもなく、手汗をかいている。とてつもなく、悪い夢でも見たみたい。
壁にかけられた、見覚えのある白熊のキーホルダーを視界に捉えて、私は息を吐いた。
どうやら、また彼に助けられたようだ。
「起きたか、千咲屋。」
『トラ男君……』
「気をつけろと言っただろ、この馬鹿。」
軽く頬を引っ張られた。
『ごめんなさいね。』
「その顔は反省してねぇな？…お前の傷、かなり重傷だった。内臓も傷付いてたし、危うく死ぬ所だったぞ。」
『まあ、そうでしょうね。血がずっと止まらないぐらい深く刺されたんだから。』
こんなに大きい刀だったわ、と自分の肩を精一杯広げて説明すると、トラ男君はため息をついた。
「傷は縫合したし、輸血もしたが、お前を帰したら、またそんな怪我するかもしれねぇ。そしたらいくらお前でも…死ぬかも、な。」
『何が言いたいの？』
「あの
『え？』
「俺なりのドクターストップとして──
お前をここに軟禁する。」
『本気？』
「ああ、本気だ。お前も知ってる通り、この隠れ家はどんな探知機でも辿れない、特殊な金属シェルターで囲まれてる。食料も水もある。見つかる事もねぇし、不便なく数年間は暮らせる。
お前にとっても俺にとっても、良い案だろ？」
『……』
いつもより
『そんなに私を心配してくれるのね。』
「は？違ぇ、これはドクターストップだ。医者が患者に安静にしろって言って何が悪い。」
『じゃあ、安静にするから外に出して、って言ったら？』
「断る。また怪我したら面倒だろ。」
『ほら、やっぱり心配してくれてる。』
問い詰めると、トラ男君は諦めたようにため息をついた。
「敵わねぇな。」
『やっと分かってくれた？』
にっこり笑うと、トラ男君の頬が引きつるのが見えた。
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作者名：ミカン酢 | 作成日時：2022年10月22日 16時
