鏡ノ花 ページ12
『
刺された横腹が、焼けた鉄を押しつけられたように熱い。
咲かせた手で、敦君も私も何とか止血はしている。
「千咲さん!上っ!」
──この状態で目の前の夜叉と戦うなんて、とてもじゃないけどできやしない。
敦君の声と共に、振り下ろされた刀を、何とか横に転がって避ける。それまでいた地面に、放射状のヒビが入った。
すぐ隣から響く轟音と衝撃波。
体が宙を舞った。そのまま砂利の上に落ちる。
痛みと焦りで思わず生唾を呑み込んだ。
避けきれない。受け止めなきゃ。
いいえ、反撃…反撃を、しなきゃ、
手足に力が入らない。
刀が振り下ろされる。
──死、
『!』
「っ、」
私の前に立った敦君の虎の爪が、刀を受け止めていた。
刀と爪が、火花を散らす。
しかし、それも一瞬。すぐに夜叉の刀が爪を押しきり、吹き飛ばされた敦君は錆びた鉄柱にもろに叩きつけられた。
さらに、とどめとばかりに、夜叉の刀が柱ごと敦君を串刺しにした。
「ぐあああ…っ」
「
が、
仕事を先に済ますとするかのう。
くたばれ、小僧。」
「ぐっ、ううっ、」
『敦君!!』
敦君が刀を掴み、抜こうとする。だが、夜叉の力は強く、柱に串刺しにされたまま動けない。
彼の口から、胸から、腹から、血が飛び散る。
「やめてっ!!」
鏡花の悲痛な叫びが耳を突き抜けた。
一気に体に力が入った。
『貴方……』
「!?まだ動くか!」
『私の仲間を、よくも…傷つけたわね…!』
傷よりも、頭が、胸が、腹の奥が、…熱い。煮えたぎるマグマのような、濁った殺意が湧いてくる。
『【スパイダーネット】』
腕の網で、夜叉を捕らえた。夜叉がもがいた拍子に、敦君から刀が抜けた。
そのまま倒れた彼の傷が虎の治癒によって治ってきているのを確認し、敵に向き直る。
『鏡花はもう、貴方達の所には戻さない。彼女は、日向で咲いてこそ美しさを放つ光の花よ。』
「!そう…───私の居場所は探偵社!
私はもう、闇の花じゃない!!」
「恨むぞ、小僧に小娘。あの子は光に目が眩んでおる。…貴様らが見せた光じゃ。」
しかし幸い、まだ手はある。
そう言って、彼女は敦君の首筋に短刀をあてた。
私の首筋にも、冷たい刃物の感触が走った。
腕の網の中にいた筈の夜叉に、いつの間にか背後から刀をつきつけられていた。
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作者名:ミカン酢 | 作成日時:2022年10月22日 16時