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演奏 ページ8

演奏時間である4分間は、僕の人生において1番短かったと思う。
演奏を見に来ている人は少なかったが、それでいいと思った。
これは、僕とAがいれば完成するステージなのだから。
Aは、練習の時にこんなことを言っていた。
「私ね、賞を取れる演奏も素敵だとは思うけど、1番は、私達の演奏を聴きに来てくれた人の記憶に残る演奏がしたい」
その言葉は、輝いていた。それは、Aが本当にピアノを愛しているからこそ出せる言葉なのだろう。
「記録よりも記憶に残る演奏を、か」
「うん。そういうこと」
「いいな、それ」
隣にいるAのことを見た。Aは、笑っていた。
Aの右足は、厚めの肌色タイツでカバーされている。それは僕の手も似たような状況だった。この秘密を知っているのは、僕らだけでいい。お互いにそう思ったからだ。
鍵盤に指が置かれた。練習のときと、いつもと同じ場所に。なんでもない日常の所作のようなそれは、僕の胸を踊らせた。
それを確認して、Aを見る。
屈託のない笑顔だった。僕にしか見せないような、そんな笑顔。
その笑顔を見てから4拍後。
僕らは演奏を始めた。

ハーモニー→←ステージ裏



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作者名:紗由紀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sayukinopurofu/  
作成日時:2022年6月29日 20時

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